2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680631
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (60217552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 旬子 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40244222)
井村 隆介 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40284864)
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Keywords | 桜島火山 / セイタカアワダチソウ / 植物中水銀の分布 / 水銀の環境循環 / 植物への移行 |
Research Abstract |
1.土壌への水銀供給量の評価 これまでの研究で、土壌中水銀濃度は、桜島6.5ng/g、高峠29ng/g(桜島から11km)、錫山229ng/g(桜島から22km)と桜島から離れるにつれて、高くなることが示されていた。しかし、本研究において、土壌の堆積速度等を考慮してさらに詳細に検討した結果、桜島では大量の火山灰が沈降するため、濃度は低いものの土壌表面が受け取る水銀の絶対量はこの3地点の中で最も高いことが明らかとなった。 桜島、高峠、錫山では土壌が1m堆積するのに、それぞれ、90年、1200年、11000年を要している。また、桜島の土壌密度は1.1g/cm^3と報告されていることから、以下の式を用い水銀の土壌への沈降量を計算した。 年間水銀沈降量(ng/m^2/年)=土壌中水銀濃度(ng/g)×土壌密度(g/m3)/堆積速度(年/m) これにより、桜島、高峠及び錫山の年間水銀沈降量は、9×10^4ng/m^2/年、3×10^4ng/m^2/年及び2×10^4ng/m^2/年と見積もられたのである。桜島では土壌中水銀濃度は調査地点の中で最も低いが、土壌へ供給される水銀量としては最も多いことになり、これらの周辺生態系への影響を調査することが今後の課題となる。 2.対照地域における植物中水銀濃度と植物への水銀の取り込み 本研究では日本に広く分布するセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)を桜島火山活動の影響評価に用いることとし、まず、そのバックグラウンドレベルを知るために体内中の水銀の分布について検討を行った。鹿児島市内で採取されたセイタカアワダチソウを根、茎、葉に分別し、茎と葉についてはさらに先端から5cm間隔で分け、水銀濃度の変化を追跡した。その結果、茎では部位による濃度変化はみられなかったが、葉中水銀濃度は先端が低く、そこから地面に近くなるほど高くなることが分かった。根、茎及び葉の水銀濃度はそれぞれ、1.1-387ng/g(平均71.2±116ng/g, n=18)、0.54-8.37ng/g(平均2.8±2.3ng/g, n=21)そして11.4-37.8(平均25.6±8.2ng/g, n=20)であった。ここで葉については、各個体の最高水銀濃度を用いている。葉における水銀濃度勾配は、植物に吸収された水銀が葉に濃縮される事を示唆するものである。一方で、セイタカアワダチソウの分布していた土壌と根の水銀濃度の間に高い相関(r^2=0.93)が観察されたものの、土壌中水銀濃度と葉の間にはそのような相関はみられなかった。これらのことは水銀の環境から植物への移行を考える上で重要な示唆を与える極めて興味深いデータである。現在、人為的に水銀を添加した土壌、水において植物を育成させその植物体内への水銀の取り込みについて研究を進めている。
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