2003 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体比測定技術を用いた湿地林生態系の栄養塩負荷の履歴解読に関する研究
Project/Area Number |
13680636
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
野原 精一 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 室長 (60180767)
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Keywords | ハンノキ / 年輪 / 安定同位体比 / 湿地 / 物質循環 |
Research Abstract |
周辺の集水域から河川等を通じた物質流入過程について、水質及び水の安定同位体比(δ18O等)を測定することで周辺の集水域からハンノキ林への窒素肥料等の流入の影響を検討した。 釧路湿原に流入する負荷量を把握するため河川水質モニタリングを実施した。採水はK1(達古武川)K4(アレキナイ川)、K5(シラルトロエトロ川)、K6(コッタロ川)、K8(雪裡川)、K9(幌呂川)、K10(温根内川)、K11(幌呂川)の8地点で2001年に冬期を除き月1回の頻度で行った。現地での水温、pHを測定し、冷蔵してつくば市の研究所に冷蔵搬送し、水質分析を行った。 尾瀬沼への流入河川の栄養塩負荷量を比較するため、2002年8月28日、2003年8月31日に長蔵小屋から反時計周りに尾瀬沼を一周して、主な流入河川(S1〜S24)の採水を行った。pH、水温(D-24、堀場)は現場で測定し、サンプルはポリプロピレン瓶に密栓して冷蔵して持ち帰った。全炭酸、溶存態有機炭素、栄養塩類、主要イオンの測定は湖水と同様の方法によった。尾瀬沼の湖水pHは6.3〜7.5の中性の範囲にあった。一方周辺の湿原は酸性にありS15を除くとpH6台であり、沼尻地区に流入するS6〜S10はpH5以下で特に酸性の河川であった。比較的流量の多いS2(大江川)、S20、S21(カマッポリ)、S22はいずれもpHは6.5付近で弱酸性であり、硝酸濃度も比較的高い。近年サケ科魚類の産卵行動がこの程度のpHで抑制されるというからイワナ・ヒメマスなどの産卵行動の抑制も危倶され自然産卵していない可能性もある。栄養塩類の中でリン酸態リンや亜硝酸は非常に低い。酸性の強いS6〜S10の河川水の栄養塩類は全て低く、それ以外では窒素は比較的高く硝酸態窒素の形態であった。自然の流出河川である沼尻川や東京電力の取水口での栄養塩類濃度はどれも低いことから、集水域から流入する硝酸態窒素は尾瀬沼で消費されていると考えられる。また、S3、S12、S14、S17、S24の水温は他に比べ低く流域の違いを詳しく調査する必要がある。狭い集水域でこれほどの水温差があることは特異であろう。
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