2002 Fiscal Year Annual Research Report
無酸素光分解反応を利用する有機塩素化合物を含む排水の処理
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13680641
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Research Institution | Toyama University |
Principal Investigator |
田口 茂 富山大学, 理学部, 教授 (80089838)
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Keywords | 有機塩素化合物 / 無酸素紫外線分解 / クロロベンゼン / 廃水処理 / 光分解 / 芳香族塩素化合物 / 光分解の除酸素効果 / 無害化処理 |
Research Abstract |
昨年度までの研究では水中の脂肪族塩素化合物の紫外線分解における,脱酸素の有効性を数多くの例で確認してきた。今年度はさらに対象とする化合物の拡大と,実用化について検討を進めた。 1.クロロベンゼンの紫外線分解と脱酸素効果 PCBやダイオキシンなどの難分解性有機化合物の基本骨格はベンゼン環の水素の一部が塩素原子で置換した構造である。これらの物質の紫外線分解の可能性を探るためのアプローチとして,芳香族塩素化合物の最も単純な化合物である,クロロベンゼンの分解について検討した。 (1)脱塩素反応に及ぼす溶存酸素の影響:脱塩素速度に及ぼす除酸素の効果は,亜硫酸ナトリウム添加による除酸素が有効であった。しかし,その程度は脂肪族塩素化合物の場合に比較して飛躍的ではなかった。窒素ガス置換による除酸素は有効ではなかった。 (2)中間生成物:除酸素を行わなかった場合,速やかに分解し無機化されるために有機の中間生成物は検出されなかった。これに反して,除酸素を行った場合,中間生成物としてベンゼンが生成し,その量は最大で始めのクロロベンゼン量の約70%にも達した。しかし,このベンゼンも速やかに分解するために,除酸素をした方が,全体としては処理速度が早いことを確かめた。 (3)最終生成物の確認:除酸素操作の有無にかかわらず,最終的な生成物として,二酸化炭素,塩化物イオン,水素イオンの存在を確認した。それ以外の物質は確認されなかった。しかし,これらの物質の生成量を正確に測定し,化学反応式を提案するには至らなかった。 2.実験排水の処理への応用 化学実験において排出された排水の処理に,無酸素紫外線分解法を適用した。対象とした排水は溶媒抽出後の水相である。この排水はトルエンが飽和した酢酸緩衝液が主成分であり,他に極低濃度のアゾ色素を含んでいた。実験の結果,色素は分解したが,目的とした有害成分であるトルエンはほとんど分解されなかった。トルエンのみを含む水では速やかに分解が進むので,この排水では,高濃度の酢酸が紫外線を吸収して妨害したものと考えられる。現在,このように高濃度の不揮発性有機物質と微量の揮発性物質を含む排水の処理を目指した装置の開発をスタートさせた。
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Research Products
(1 results)