2002 Fiscal Year Annual Research Report
多環芳香族炭化水素の降下負荷量と土壌,底質,魚介類への分布に関する調査研究
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13680661
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Research Institution | Toyama Prefectural University, College of Technology |
Principal Investigator |
奥川 光治 富山県立大学短期大学部, 環境工学科, 助教授 (40133590)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / Ames変異原性 / 降水 / 乾性降下物 / 土壌 / 底質 / 生物 |
Research Abstract |
本研究では詳細な調査により湿性および乾性降下物によるPAHsの降下負荷量を明らかにするとともに,PAHsの土壌,底質,生物への移行,分布を解明した.得られた結論は以下のとおりである.1.降水および乾性降下物による年間降下負荷量はPAHs全成分を合わせると672g/(km^2・y)であった.季節的な変化では,冬季の負荷量が大きく,12月と1月だけで年間の55%を占めた.乾性降下物による負荷量は降水の25.6%と無視できなかった.2.農地や森林などにおける土壌調査によると,PAHs含量は74.0〜2590ng/g-dwであり,市街地や道路,自動車の影響が認められた.3.河川の流下方向における底質調査によると,PAHs含量は55.5〜1910ng/g-dwであり,道路排水,事業場排水など市街地や有機物含量の影響が認められ,河口部では船舶からの流出油の寄与も考えられた.4.貯水池,溜池の底質では,PAHs含量が282〜862ng/g-dwであった.5.水環境におけるPAHsの分布についてまとめると,降水の懸濁態ではPAHs含量は10^4ng/g,溶存態では10^<-2〜-1>ng/g,乾性降下物では10^<4〜5>ng/gの範囲を示した.土壌と底質では10^<0〜3>ng/gオーダーであった.貯水池・溜池上層水の懸濁態のPAHs含量は10^<3〜4>ng/g,植物プランクトンでは10^<3〜4>ng/gのオーダーであった.溶存態PAHsは10^<-3〜-2>ng/gであった.組成について言うと,降水と乾性降下物では低分子量から中間の分子量までのPAHsが多いのに対し,土壌では高分子量のPAHsの割合も増加すること,底質や魚介類では低分子量のPAHsが少なくなり,高分子量のPAHsが優勢になること,また,上層水の懸濁態や植物プランクトンでは低分子量から高分子量までのPAHsが認められること,さらに,溶存態では低分子量のPAHsのみ認められることが明らかとなった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 奥川光治, 田嶋寛史, 高倉裕子, 森口舞子, 宮崎徳明: "降水に含まれる多環芳香族炭化水素の懸濁態と溶存態への分配"第11回環境化学討論会講演要旨集. 444-445 (2002)
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[Publications] 野坂広恵, 奥川光治, 宮崎徳明, 森口舞子, 高倉裕子, 田嶋寛史: "土壌中の多環芳香族炭化水素の分布特性"第11回環境化学討論会講演要旨集. 446-447 (2002)
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[Publications] 奥川光治, 田嶋寛史, 高倉裕子, 森口舞子, 宮崎徳明: "詳細調査による降水の変異原性と多環芳香族炭化水素濃度に関する研究"第39回環境工学研究フォーラム講演集. 101-103 (2002)
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[Publications] 野坂広恵, 奥川光治, 田嶋寛史, 宮崎徳明, 森口舞子, 高倉裕子: "底質中の多環芳香族炭化水素の分布特性"第39回環境工学研究フォーラム講演集. 104-106 (2002)
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[Publications] 奥川光治, 田嶋寛史, 蒲生優子, 立川智哉, 三屋久美: "降水および乾性降下物による多環芳香族炭化水素の降下負荷量(2)"第37回日本水環境学会年会講演集. 554 (2003)
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[Publications] 野坂広恵, 奥川光治, 能登勇二, 田嶋寛史: "水環境における多環芳香族炭化水素の分布特性"第37回日本水環境学会年会講演集. 555 (2003)