2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680662
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Research Institution | Kyoto Women's Junior College |
Principal Investigator |
新保 慎一郎 京都女子大学短期大学部, 教授 (60027406)
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Keywords | 1日スズ摂取量 / ICP-MS / 陰膳食物収集 / 湿式灰化 / 成人スズ摂取量 / 幼稚園児スズ摂取量 |
Research Abstract |
【目的】これまで,金属スズや無機スズは,建材,食器,缶詰容器など日常身近にあるため,有害金属としての認識はなく,人体への取り込み,生理的関与,毒性などの研究は1970年以降の知見に乏しかった。今日,有機スズの毒性が明らかになり,日常生活での日本人のスズ曝露量について,改めて食事からの摂取量を明らかにすることを目的とした。 【対象】成人男女501名と幼稚園児41名を調査対象に,陰膳法により旧食事検体を収集した。 【方法】食事検体の標本を湿式灰化し,誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて1日スズ摂取量を測定した。 【成績、考察】成人の食事からのスズ摂取量は0〜5407μg/日で,GM(GSD)は16.2(7.73)μg/日であった。この値は従来の1日摂取量1〜4mg/日に比べ極めて低値であった。とくに検出感度2μg以下の対象者が193名(38.5%)も存在し,一方,1日摂取量が1mg以上の対象者は40名(8%)であった。男女別スズ摂取量も同様な傾向で,食事摂取量の多寡と無関係であった。幼稚園児41名では0.4〜1055μg/日の摂取量で,GM(GSD)は10.7(10.5)μg/日あった。対象者中1mg以上摂取者は1名であった。成人対象者と同様男女間に差はなく,食事摂取量との関係は認められなかった。 【結語】以上の成績から,従来報告されている,成人1日スズ摂取量1〜4mgを満たす者は10%と少なく,高摂取者も他日での摂取量が数μgの低値であったことから,食品のスズ含有量より,摂取食品へのスズ混入,汚染などを考えるのが妥当で,これまでの報告値は大きく修正する必要があると結論した。数は少ないが幼稚園児の成績もこれを支持するものであった。なお,試料灰化に使用する酸の種類で検出感度に影響があり,精度管理をより厳密にして成績をまとめたい。
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