2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680662
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Research Institution | Kyoto Women's Junior College |
Principal Investigator |
新保 慎一郎 京都女子大学短期大学部, 教授 (60027406)
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Keywords | スズの測定法 / ICP-MS / 食事中のスズ摂取量 |
Research Abstract |
食品中に多く存在するといわれるスズの測定は困難で未だ確立されたものはない。前年度までにICP-MSを用いIn(115)を内部標準としてSn(120)の測定を行いその成績を検討してきた。検査試料である食事検体のスズをカドミウム、鉛と同時測定をするためには、前処理として湿式灰化法が多数検体を処理する上で最適であることを確認した。ICP-MSによる定量は検量線法により、低濃度用(0,1,2ppb)、高濃度(0,10,20ppb)の3点法で検討したが、低濃度から高濃度まで検量腺は直線上にあり、測定試料濃度からの検討で低濃度用で測定がカバーできることを確認した。試薬ブランク灰化液によるスズ添加による回収率は1.0ppbで0.982ppb,回収率98.2%、2.0ppbで2.074ppb,103.7%と良好で、10ppb,20ppbでも同じく100%の回収率であった。食事試料検体への添加回収率は、試薬での検討と同様で1.0ppbは0.992ppb,99.2%、2.0ppbは2.092ppb,104.6%であった。高濃度の回収率も100%の値と良好な成績を示した。次に標準物質NBS 1548a中のスズ標定値17.2μg/gの測定値は16.1μg/gで回収率93.4%であった。NBS 1566b中0.031μg/gでは0.026μg/gで83.3%と低濃度で悪かった。 成人男女から陰膳食物収集法で得た食事検体を用い1日スズ摂取量を測定した。摂取量の度数分布は最小値測定感度平均2.5μg/日以下から最大値5407μg/日に分布し対数正規分布を示した。検出下限以下の測定値を2.5μg/日と仮定した計算値は幾何平均値(幾何標準偏差)16.2(7.73)μg/日となった。検出下限以下の193名全体の38.5%を除外した値は52.4(6.04)μg/日となり,この成績からみても従来からの報告1日数mgの摂取量は疑問視せざるを得ない結果であった。 スズは鉄、鉛などとともに自然界にまた種々の製品をとおして身辺に広く分布している。食事からの摂取量を知る上で測定試料の前処理を慎重に行うことが求められる。灰化時の汚染防御に神経を払ったが、測定の経緯から灰化に用いる試薬とくに硝酸に含まれるスズ量によって検出感度が影響されることが明らかとなった。有害金属測定用硝酸の使用では、とくに試薬ブランク値が高値となりロットNoによる差もみられ、検出下限値を大きく押し上げた結果、前述のごとく多数の検出下限以下の測定件数となった。電子工業用硝酸では幾分の成績の向上がみられたが、やはりロットの違いによる成績の差異がみられた。価格としては10〜20倍高価であるが、多摩化学の超高純度分析用試薬AA-10またはAA-100硝酸の使用で問題の解決が期待できることが明らかとなり、基礎検討とともにこれまでの測定試料の再灰化による比較、さらに水、尿、血中の測定もあわせ行っている。
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