2002 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍細胞集積性ペプチド類を用いた癌の診断および治療への新展開に向けて
Project/Area Number |
13680678
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
若宮 建昭 近畿大学, 理工学部, 教授 (10028243)
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Keywords | 核磁気共鳴イメージング(MRI) / 癌の診断と治療 / 腫瘍細胞集積性ペプチド / 中性子捕捉療法(BNCT) / 2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ボロノフェニルアラニン / ペンタフルオロフェニルアラニン / p-ボロノフェニルアラニン |
Research Abstract |
実績:(1)市販のPhe(4F)は極めて高価なため、前年度はこのアミノ酸を4-フルオロベンジルクロリドとアセトアミドマロン酸エステルによる常法にしたがって合成した。しかし、^<19>F核磁気共鳴イメージング(MRI)に用いるにはフッ素の含有率が低すぎるので、本年度はペンタフルオロフェニルアラニン[Phe(F_5)]の調製法を確立した。このようにフッ素の含有率を高めることにより、腫瘍細胞への取込み量が増大されることも期待できる。また、Phe(F_5)を含む種々のジペプチドの合成もようやく完了したので、現在腫瘍細胞へのトランスポーターを介した取込み実験に着手している。 (2)p-ボロノフェニルアラニン(BPA)も同様に高価であり、^<10>Bで標識した化合物を得るには、従来Snyderあるいは切畑らによる合成法が用いられて来た。しかし、それらの方法では、合成の途中でCCl_4や臭素のような有害な試薬を用いなければならないので、昨年度p-ブロモベンツアルデヒドから出発する新たな合成経路を確立した。本年度は、酵素法による光学分割のためN-クロロアセチル誘導体として調製することを試みたが、種々の条件検討にもかかわらず残念ながら目的を達成することができなかった。しかし、nBuLiを用いる緩和な条件でのホウ素化、ベンジル位のハロゲン化の温和な条件などを改良し、N-アセチル体の比較的効率的な新規合成経路を確立できた。引き続き、得られたN-アセチル体の酵素分割を進めている。 (3)本年度は、新たにガンの診断と治療の両方に役立つフッ素含有BPAをデザインし、その合成を進めることにした。標的化合物は、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ボロノフェニルアラニン[BPA(F_4)]で、市販の2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸から出発する合成経路について、現在検討を加えているところである。この化合物が得られれば、MRIで腫瘍細胞の位置を確認した上で、中性子の照射を正確に行えるようになれば、中性子捕捉療法(BNCT)の新たな進展につながることが期待される。 考察:アミノ酸の合成に予想以上の時間を費やしたため、残念ながら本研究期間内に論文を発表することはできなかった。しかしながら、本研究課題に必要なフッ素あるいはホウ素含有アミノ酸類の調製法が確立できたので、いよいよMRIおよびBNCTに関する新たな研究の展開が可能となった。今後得られる種々の成果、および、各種アミノ酸合成に関する論文を順次発表して行きたい。
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