2002 Fiscal Year Annual Research Report
組織特異的な遺伝子発現を用いたシナプス可塑性におけるシナプス後細胞の役割の解明
Project/Area Number |
13680735
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷藤 高子 (森本 高子) 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10311648)
|
Keywords | シナプス / 可塑性 / CaMKII / パッチクランプ / ショウジョウバエ / 神経筋接合部 / 標的細胞 / シナプス発生 |
Research Abstract |
神経細胞はその標的細胞に到達し、適切な情報を伝えるためのシナプス伝達機構を確立する。さらに、シナプスを形成した後も、周りの環境の変化や受け取る刺激の程度に対応して、シナプス伝達効率を変えるという、可塑的な性質を持っている。シナプス伝達効率を可塑的に変化させる要因のうち、シナプス後細胞の変化、あるいはシナプス後細胞からの因子が関わっていることが示唆されている。しかし、シナプス形成・維持・可塑性におけるシナプス後細胞の役割を解明するために、有力な武器となるシナプス後細胞のみの遺伝子発現を調節する良い実験系は非常に限られている。本研究では比較的単純で、かつ、豊富な分子生物学的手法が利用できるショウジョウバエ幼虫の神経・筋接合系を使用した。標的細胞内の分子を操作して、その影響を見る良い実験系として、同じ神経細胞がシナプスを作っている、隣り合う二つの筋肉細胞の一方のみ、遺伝子発現を容易に操作できる実験系を確立し、標的細胞由来因子によるシナプス形成への特異的な影響を、ダブルパッチクランプ法を用いて調べた。まず、標的細胞内のCaMKIIの活性化により、シナプス形成がどのように変化するか検討した。後シナプス電流をパッチクランプ法により測定し、シナプス伝達の変化を指標にした。その結果、孵化後3時間以内の幼虫ではCaMKII活性化により、シナプス伝達の促進が見られた。このシナプス伝達の変化はシナプス前細胞の変化によるもので、逆行性因子を介していることが、明らかになった。さらに、孵化後5時間以上経過した幼虫では逆に、シナプス伝達が抑制され、同じ神経細胞がシナプスを作るもう一方の筋肉細胞の応答が促進されているという興味深い結果も得られた。このようにユニークな実験系を確立し、その有効性を示すことができた。さらにこれまで不明であったシナプス形成過程におけるCaMKIIの働きについて明らかにすることができた。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] Kazama, H., Morimoto Tanifuji, T., Nose, A.: "Postsynaptic Activation of CaMKH Promotes Coordinated Pre and Postsynaptic Maturation of Drosophila Neuromuscular Junctions"Neuroscience. 117・3. 615-625 (2003)