2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680745
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Research Institution | Kumamoto University, Graduate School of Medical Sciences |
Principal Investigator |
玉置 春彦 熊本大学, 医学部, 助手 (80264290)
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Keywords | フラビン酵素 / アシルCoA脱水素酵素 / アシルCoA酸化酵素 / D-アミノ酸酸化酵素 / NMRスペクトル / 可視紫外吸収スペクトル / X線結晶構造解析 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
本年度は、代表的なフラビン酵素であるアシルCoA脱水素酵素(ACD)とD-アミノ酸酸化酵素(DAO)における反応機構研究を、実験的および理論的手法により行った。ACDの同族酵素として、アシルCoA酸化酵素(ACO)のX線結晶構造解析を報告した。ACD酵素の立体構造との間の詳細な比較により、還元型酵素の再酸化過程における相違が、酵素活性部位におけるフラビン環周りの水素結合および水和状態に起因することが示唆された。また、ACD酵素に関しては、フラビン環の8位のメチル基を置換した人工フラビンを用いた再構成ACD酵素により、置換基効果による基質反応および基質アナログとの結合に伴う電子論的性質を、種々の分光学的手法により解析した。酵素活性部位の立体構造に基づいて作成したモデル分子の分子軌道計算(密度汎関数法、DFT)は、基質アナログとの複合体において観測される電荷移動吸収バンドの置換基効果を見事に説明した。さらに、DFT計算は、基質反応における実験データを定量的に説明し、触媒作用の本質である遷移状態における諸性質に対して電子論的観点からの理解を与えた。遷移状態エネルギーを低下させる本質的要因が、基質の脱プロトン化および引き続き起こるハイドライド移動の反応過程の何れの段階においても、基質およびその中間状態が、フラビン環との間に作用する電荷移動相互作用により安定化することに起因することである。現在、ACD酵素において行った研究手法をDAO酵素に適用し、DFT計算が反応の終状態における実験事実を定量的に説明することを、電荷移動吸収バンドの再現において確認した段階である。本研究は、DFT計算をフラビン酵素反応に適用する際の有用性を示すと共に、実験による検証を組み合わせた基礎的手法を構築した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 中嶋: "Three-Dimensional Structure of the Flavoenzyme Acyl-CoA Oxidase-II from Rat Liver, the Peroxisomal Counterpart of Mitochondrial Acyl-CoA Dehydrogenase"Journal of Biochemistry. 131(3). 365-374 (2002)
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[Publications] 二科: "Molecular Mechanism of Substrate Activation in Medium-Chain Acyl-CoA Dehydrogenase : A Study Using Artificial FADs"Journal of Biochemistry. 133(発表予定). (2003)