Research Abstract |
<目的> 中枢神経系が損傷を受けると,反応性アストログリアが増殖してグリア瘢痕を作る.このグリア瘢痕が中枢神経の再生を抑制していると考えられている.反応性アストログリアではtenascinが高発現していることから,本研究ではtenascin knockout mouse(TN/KO)を用いて,tenascinを発現していないアストログリアの機能について検討することを目的としている.本年度は,マウスの脳に損傷を与え,一定時間経過後に脳の切片を作成し,損傷部位におけるグリオシスおよび創傷治癒の状態について,野生型(WT)マウスとTN/KOで比較検討した. <方法> 成体のマウスをネンブタールで腹腔内麻酔し,頭頸部の皮膚を切開し,27Gの針を用いて大脳皮質に尾側から吻側にかけて尖刺した.尖刺後1,3,7日目にエーテル麻酔を行ってから,4%PFAを用いてかん流固定したのちに脳を取り出し,翌日,15%sucroseに移し替えて一晩浸潤を行い,凍結切片を作成した.アストログリアの増殖・グリオシスについては抗GFAP抗体を用いて免疫染色法で検討した. <結果と結論> 尖刺して3〜7日目にはWTではGFAPの発現は十分高かったのに対して,TN/KOでは3日目にはGFAPの発現が認められたが,7日目にはほとんど発現が認められなかった.このことは,TN/KOではグリオシスがWTよりも早期に終了することが考えられ,逆に言えば,グリオシスを活発に引き起こすには,脳内のアストロサイトがテネイシンを発現していることが必要であると思われた.今後,損傷部位周辺の創傷治癒について検討していく予定である. 以上の結果は,日本神経科学会(7月,名古屋),IBRO(7月,Prague, Czech),SFN(11月,New Orleans, USA),日本分子生物学会(12月,神戸)において発表を行った.
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