2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経接着分子L1による軸索突起伸長の分子機構の解明(細胞内分化輸送とシグナル伝達系)
Project/Area Number |
13680857
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 裕之 理化学研究所, 発生・分化研究グループ, 上級研究員 (10233933)
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Keywords | 神経接着分子 / 軸索 / 成長円錐 / 脂質ミクロドメイン / 脂質ラフト / L1 / CALI / Src |
Research Abstract |
平成13年度の研究では、軸索成長円錐における神経接着分子L1のトラフィッキング(成長円錐中心部でのエンドサイトーシス、成長円錐周辺部への小胞輸送、成長円錐先端部形質膜への再挿入、後方移動するアクチン線維との結合)が、軸索伸長を促進するための力学的な基盤であることを実証した。平成14年度はL1エンドサイトーシスの制御機構に関する研究を行い、以下のような知見を得た。(1)L1とクラスリンアダプターAP2との結合は、L1細胞内領域の1176番目のチロシン残基のリン酸化により制御される(チロシン脱リン酸化型L1のみがクラスリン経路でエンドサイトーシスされる)。(2)このチロシン残基は、非受容体型チロシンキナーゼSrcによりリン酸化される。Srcは、細胞膜内の特殊微小領域(脂質ミクロドメイン)に存在することが知られている。各種神経接着分子の細胞膜上での局在を解析したところ、L1は脂質ミクロドメイン内外双方に存在することが明らかになった。L1依存性軸索成長過程における脂質ミクロドメインの解析を行い、以下のような知見を得た。(1)脂質ミクロドメインの主要構成脂質であるコレステロールあるいはスフィンゴ脂質の合成を阻害すると、軸索伸長は有意に抑制された。(2)顕微鏡下レーザー分子機能不活性化法(micro-CALI法)を応用して、細胞局所の脂質ミクロドメインを選択的に破壊する技術を開発した。(3)本法により、成長円錐周辺部の脂質ミクロドメインが軸索伸長に必須であることが明らかになった。以上の知見により、脂質ミクロドメインを場とするL1細胞内領域チロシンリン酸化が、L1エンドサイトーシスの部位特異性を制御することが示唆された。また、今回開発したMicro-CALIによる脂質ミクロドメイン機能阻害法は、神経科学だけでなく幅広い分野での細胞機能の理解に貢献するものと期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Nakai, Y., Kamiguchi, H.: "Migration of nerve growth cones requires detergent-resistant membranes in a spatially defined and substrate-dependent manner"The Journal of Cell Biology. 159・6. 1097-1108 (2002)
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[Publications] Schaefer, A.W., et al.: "L1 endocytosis is controlled by a phosphorylation-dephosphorylation cycle stimulated by outside-insignaling by L1"The Journal of Cell Biology. 157・7. 1223-1232 (2002)
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[Publications] Katayama, M., et al.: "Patched and smoothened mRNA expression in human astrocytic tumors inversely correlates with histological malignancy"Journal of Neuro-Oncology. 59・2. 107-115 (2002)
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[Publications] 伊藤康一, 上口裕之: "神経接着分子と脂質マイクロドメイン"蛋白質 核酸 酵素. 47・4. 338-343 (2002)
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[Publications] 戸島拓郎, 上口裕之: "神経軸索の伸展を制御する仕組み"Brain Medical. 14・4. 387-392 (2002)