2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動の繰り返し活性化による長期的シナプス新生の観察
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13680869
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨永 恵子 (吉野 恵子) 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (60256196)
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Keywords | 海馬 / 切片培養 / シナプス新生 / 可塑性 / 集合シナプス電位 / MAPK / シナプトフィジン |
Research Abstract |
これまで、ラット海馬の切片培養標本にアデニル酸シクラーゼの活性化剤であるフォルスコリン(F : K)を繰り返し投与すると、投与後1週間経過してゆっくりと始まるシナプス新生が観察されることを報告した。この長期シナプス新生を起こすためには、3時間から24時間の間隔で3回以上繰り返してFKを投与することが必要であった。 本年度は海馬の興奮性伝達物質であるグルタミン酸の繰り返し投与で同様の長期シナプス新生が起こるかについて検討した。培養8〜12日後の海馬切片培養標本にグルタミン酸を1回3分間、24時間間隔で3回投与し、その後のシナプス新生を観察した。まず、FKの時と同様にCA3-CA1シナプスにおける最大集合シナプス電位の大きさを最大集合スパイクの大きさで除した比の値(E/S比)を、CA1錐体細胞1個当たりのシナプス数の指標とした。グルタミン酸3回投与群(Glu3)では対照群(Con3:グルタミン酸を含まない溶液で液交換のみ行った)と比較すると、刺激の1週間後から有意にE/S比の増大が認められ、2週間後まで持続した。この増大はグルタミン酸1回投与群(Glu1)では認められなかった。このとき、プレシナプスの指標であるシナプトフィジン免疫陽性スポット密度を調べると、Glu3ではCon3やGlu1に比べて電気生理学的指標と同様の時間経過で有意に増加していた。次に、グルタミン酸刺激時にどのような蛋白質リン酸化酵素が活性化されることが長期シナプス新生につながるのかを知る目的で、種々の蛋白質リン酸化酵素の阻害剤存在下でグルタミン酸刺激を行い、1週間後のE/S比を観察した。その結果、MEKおよびPKAの阻害剤で長期シナプス新生が阻害された。以上の結果より、グルタミン酸の繰り返し投与によっても長期シナプス新生を起こせること、またグルタミン酸による長期シナプス新生は投与時のMEKとPKAの活性化が必要であることが示唆された。さらに、MEKによりリン酸化されたMAPKの発現量が、1回刺激直後に比べて3回刺激直後でより顕著に増加すること、また3回刺激時にのみリン酸化MAPKがCA1錐体細胞の細胞質から核に移行することも分かった。今後、長期シナプス新生を起こすのに有効なグルタミン酸の刺激間隔、刺激頻度、さらにMAPKのリン酸化がこの長期シナプス新生にどのように関与しているのかについて検討を進めていく。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Fujikawa, N., Shimonaga, T., Tominaga-Yoshino, K., Ogura, A.: "Ultrafilter culture, a novel method for estimation of molecular mass of unidentified biologically active substance, reveals small molecule trophic factor released from cultured mouse cerebellar granule neuron"Brain Research. 947・2. 243-251 (2002)
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[Publications] Tominaga-Yoshino, K., Kondo, S., Tamotsu, S., Ogura, A.: "Repetitive activation of protein kinase A induces slow and persistent potentiation associated with synaptogenesis in cultured hippocampus"Neuroscience Research. 44・4. 357-367 (2002)
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[Publications] Urakubo, T., Tominaga-Yoshino, K., Ogura, A.: "Non-synaptic exocytosis enhanced in rat cerebellar granule neurons cultured under survival-promoting conditions"Neuroscience Research. (in press). (2002)