2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動の繰り返し活性化による長期的シナプス新生の観察
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13680869
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨永 恵子 (吉野 恵子) 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (60256196)
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Keywords | 海馬 / 切片培養 / シナプス新生 / 可塑性 / 集合シナプス電位 / MAPK / シナプトフィジン |
Research Abstract |
前年度は、ラット海馬切片培養にグルタミン酸を繰り返し投与すると、CA3-CA1シナプスにおいて長期的シナプス新生が起こることを見出した。本年度はこの現象について、さらに詳細な解析を行った。 シナプス新生は電気的および組織学的指標で観察した。電気的指標にはCA3-CA1シナプスにおける最大集合シナプス電位の大きさを最大集合スパイクの大きさで除した比の値(E/S比)を、CA1錐体細胞1個当たりのシナプス数として用いた。組織学的指標にはシナプトフィジン免疫陽性スポット密度を用いた。グルタミン酸繰り返し投与による長期的シナプス新生に関して明らかになったことは、以下の点である。 1)グルタミン酸の濃度依存性:30μM以下は無効、100-300μMで有効であった。海馬切片培養にLTPを誘発させる濃度と一致していた。 2)投与回数依存性:3回以上の繰り返しが必要であった。 3)投与間隔依存性:1時間以下または36時間以上の間隔で無効、2時間以上24時間以下の間隔で有効であった。 4)MAPK活性化の関与:3回刺激後のみリン酸化MAPKが核移行することが判っていたので、3回目のMAPK活性化の長期シナプス新生への関与について検証した。MAPKリン酸化酵素(MEK)の阻害剤を1回目または3回目のグルタミン酸刺激時に加えると、3回目刺激時の阻害剤投与で長期的シナプス新生が阻害された。一方、1回目の阻害剤投与では阻害されなかった。 以上の結果から、単なる一過性の細胞興奮ではなく短期可塑性(LTP)の繰り返し誘発が、長期可塑性(長期的シナプス新生)の誘発に必要であること、繰り返し刺激による何らかのシグナル分子の加算的蓄積、または異なるシグナル分子への情報のバトンタッチが必要であることが示唆された。さらに、3回目刺激の情報を担う重要分子の一つは、活性化MAPKであることが示唆された。今後は、1回のグルタミン酸刺激後に起こる一過性のシナプス新生と、繰り返し刺激による長期に安定・維持するシナプス新生との質的相違点について調べていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Urakubo, T., Tominaga-Yoshino, K., Ogura, A.: "Non-synaptic exocytosis enhanced in rat cerebellar granule neurons cultured under survival-promoting conditions"Neuroscience Resea. 45(4). 429-436 (2003)
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[Publications] Morita, D., Tominaga-Yoshino, K., Ogura, A.: "Survival promotion of rat cerebellar granule neurons by co-culture with pontine explant"Brain Research. 982(1). 1-11 (2003)
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[Publications] Shinoda, Y., Tominaga-Yoshino, K., Ogura, A.: "The dendritic layer-specific persistent enhancement of synaptic transmission induced by repetitive activation of protein kinase A"Neuroscience Research. 47(2). 191-200 (2003)