2001 Fiscal Year Annual Research Report
ウェーブレット解析を用いた動物の新しい苦痛評価法の確立
Project/Area Number |
13680915
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
安藤 隆一郎 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (30158737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 千寿子 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (90296020)
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Keywords | Flexor reflex / 痛み / 自律神経系 / 心電図 / カプサイシン / ウレタン麻酔 / 時系列分析 / PSD |
Research Abstract |
痛みの解析モデルとして、ウレタン麻酔下のラットを用いて後肢への侵害性刺激によるFlexor reflexモデルを開発した。すなわち、ヒフへのpinching刺激及び大体動脈内へのcapsaicin(CAP)注入によるFlexor reflex反応をEMGとしてとらえ、それを積分値に変換して定量化を行った。また侵害刺激誘発本反応の局所麻酔薬およびオピオイド系薬物に対する感受性から、痛誘発性の反応であることを確認し、痛み解析モデルとして有用であることを明らかにした。本モデルにおける非刺激時の定常状態と侵害刺激時の非定常状態との自律系に与える変化を探る目的で、血圧、心拍および呼吸など循環器系の生体信号をparameterとして時系列分析等を行ったところ、非刺激時と刺激時、特にCAP投与群では明らかにこれらparameter間での相違が観察された。さらに心電図のR-R間隔のパワースペクトル分析を行ったところ、非刺激時とpinching刺激時では呼吸に同期したピークとごく低周波領域のピークおよびその密度がほぼ一致するなど両者間に相違が認めらなかった。しかしながら、持続性の強い痛みが惹起されるCAP投与時には、呼吸に同期したピークのパワー密度の低下と低周波領域のパワー密度の上昇が観察された。このことは、CAPが自律系の副交感系を強く駆動することを意味し、ひいては生体の受ける痛みの種類や強さによってこのような相違をとらえることができる可能性をも示唆しており、この分析法が痛み誘発性自律系ダイナミクネの観察に有効であることを提示している。今後は、本モデルの苦痛尺度としての有用性をさらに精査する目的で呼吸深度やEEGを新たなparameterとして加え、意識レベルの推移が与える影響も加えて観察し、本手法が動物の苦痛に伴う情動変化の有効な一指標となり得るかどうか検討する予定である。
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