2001 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの中での日本の他界イメージの形成と展開に関する研究
Project/Area Number |
13710026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
鷹巣 純 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (00252205)
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Keywords | 地獄 / 六道 / 他界 / 説話画 / 図像 / 死者供養 / 仏教絵画 / 水陸画 |
Research Abstract |
研究計画上の初年度である本年度は、資料収集に重点を置いた。ことに実地調査は、新出資料の情報が多く寄せられたため当初予定の件数を上回り、文献収集の計画を思いがけず圧迫する結果となった。また、予算の減額により赤外線ビデオによる調査は断念せざるを得なかった。本年度の主な成果は以下のとおりである。 出光美術館本十王地獄図(旧前田本)の精査では、制作過程での図様の変更箇所や未読画中墨書の確認ができ、日本における他界イメージの形成史に占めるこの大作の位置を分析することが可能となった。この調査での成果は近く論文化すべく準備中である。 新出資料のうち特記すべきは、個人蔵の2件5点の中国製水陸画残闕である。うち1件は4点からなる明代の水陸画の残闕で、十界のそれぞれを象徴するモティーフを抱いた羅漢群像や、水陸斎を主催する施主旦那の祖先の群像などの幅を含み、死者供養・祖先供養としての水陸斎の性質を分析するうえで極めて資料性が高い。また別の1件も、明末あるいは清代ながら大和文華館所蔵の「釈迦牟尼仏変現大力明王」図と図像的に類似性が高く、水陸斎における明王の機能を考えるうえで貴重な資料となろう。これらの資料についても近く論文化を考えている。 この他、弘川寺本十王図が水陸画であることを論証する論文の執筆が現在進んでいる。
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