2001 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの聴覚性痙攣に与える幼児期騒音提示(プライミング)効果とその脳内機構の解明
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13710051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂本 敏郎 理化学研究所, 情報機構研究チーム, 研究員 (40321765)
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Keywords | audiogenic seizre / priming / NMDA / inferior colliculus |
Research Abstract |
マウスは幼児期に大きな音を聴かせると,数日後に同じ刺激を与えるテストで聴覚痙攣を起こしやすくなる.この聴覚痙攣のプライミング効果の脳内メカニズムは明らかにされていない.そこでC57BL/6マウス172匹を用いて聴覚痙攣の神経回路に含まれる下丘と上丘を電気刺激し、誘発された聴覚痙攣に及ぼすプライミング効果を調べた.痙攣はマウスが狂ったように走るWild running段階と,倒れて手足を震わしたり伸ばしたりするclonic-tonic段階に分類される.下丘への刺激では,いずれの聴覚痙攣段階でも生起する閾値(電流値)がプライム群で有意に低く、上丘深層への刺激では両群で有意な差が認められなかった.これらの結果は,上丘深層ではなく下丘がマウスの聴覚痙攣のプライミング効果に重要な役割を果していることを示している.したがって聴覚痙攣のプライミング効果は,下丘の興奮性の上昇によるものであることが示唆された.この研究は、英文学術雑誌であるBrain Researchに掲載された。 さらにこの研究を発展させて、NMDAレセプターのサブユニットNR2A欠損マウスの下丘電気刺激による聴覚痙攣の生起について検討した。12週齢から18週齢のNR2A欠損マウスと野生型マウスの下丘外側核に電極を埋める手術を行った.1週間後にテストを実施し、痙攣が生じる電流値を測定した.NR2A欠揖マウスでは痙攣閾値が野生型マウスに比べて有意に高かった.また,各電流値でのNR2A欠損マウスの痙攣生起率も野生型マウスに比べて低かった.これらの結果は,NR2A欠損マウスでは野生型マウスに比べて下丘電気刺激による痙攣が起りにくいことを示している.したがって,NMDAレセプターサブユニットNR2Aが聴覚痙攣の生起に重要な役割を果していることが明らかになった.この研究は日本神経科学学会で発表された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Sakamoto, T., Niki, H.: "A Coustic priming lowers the threshold for electrically induced seizure, in mice inferior colliculus, but not in the deep layers of superior collicalus"Brain Research. 898. 358-363 (2001)