2001 Fiscal Year Annual Research Report
発話計画における処理単位についての実験的研究:日本語における分節・拍・音節処理
Project/Area Number |
13710052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
呉田 陽一 (財)東京都老人総合研究所, 言語・認知部門, 研究員 (60321874)
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Keywords | 発話計画 / 拍・音節 / プライミング / 命名 |
Research Abstract |
日本語の音韻体系では,子音と母音の二つの分節(CV)からなる拍(mora)を言語処理の単位と考えるのが一般的である。CV構造の拍を自立拍と言うが,拍には二重母音"かい/kai/"(CVV)"のような,音韻的長さの単位としてはそれだけで一拍分になりうる特殊な拍が存在する。しかし,特殊拍は拍の単位としては独立していても、音節の単位としては独立しない特徴がある。本研究は日本語の発話では拍が単位となっているのか、あるいは欧米言語と同様に音節が単位となっているのかを解明する実験的研究である。 本年度は,プライミングを使った命名課題を45名の被験者を対象に実施した。刺激セットには2つのカテゴリーからなる合計24枚の線画を使用し,披験者には絵の正確な名前がすぐに答えられるようにあらかじめ学習をしてもらった。刺激カテゴリーは自立拍だけからなる単語(例:「からす」「からて」)と特殊拍を含む単語(例:「そうこ」「そうじ」)である。次にコンピュータ画面上にこれらの刺激絵を一枚づつ提示し,出来るだけ早くその名前を答えてもらい,反応時間を測定した。プライムは刺激絵にわずかに先立って(40〜160ミリ秒)平仮名文字で提示されるが,3条件からなる。(1)刺激絵と音韻的に「関連」するプライム(例:「から」「そう」),(2)「無関連」プライム(例:「てす」「けい」),そして(3)「中性」プライム(例:「%&」「$#」)である。日本語の発話計画が拍を単位にしていれば、何れの刺激カテゴリーも同じ量のプライミングを受け,条件間に差は見られないはずである。しかし音節を単位にしていれば、自立拍だけからなる単語の方が特殊拍を含むものよりもプライム量が大きくなると予想される。結果は後者,すなわち音節単位の発話を支持するものとなった。
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