2001 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害者における自動的聴覚処理の事象関連脳電位による検討
Project/Area Number |
13710057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
池田 一成 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (50293006)
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Keywords | 知的障害 / ミスマッチ陰性電位 / 自動的聴覚処理 / 純音 / 複合音 / 事象関連脳電位 |
Research Abstract |
今年度は実験の遂行に必要な備品等の購入をおこない,知的障害者の音声知覚を事象関連脳電位(ERP)により検討する実験研究に着手した。現時点では予備的研究の段階であるが,次に述べる知見を確認しつつある。 1.オッドボール逆転課題時における知的障害者のERP オッドボール逆転課題では出現確率の異なる2刺激(標準刺激と逸脱刺激)を被験者に提示する際,セッション間で標準刺激と逸脱刺激を逆転させる。(1)これら2刺激の一方が純音,一方が複合音(合成母音)であるとき,ほとんどの健常者において複合音逸脱刺激に対するERPの振幅が純音逸脱刺激に対する振幅より大になる。(2)一方,ダウン症候群の中には聴力および聴覚誘発電位に異常がないにも関わらず,複合音逸脱刺激に対する振幅が純音逸脱刺激に対する振幅より明らかに小さくなる事例が見出された。(3)上記のような振幅の逆転を示す事例には,知的機能の退行を認めた。ただし,退行を示す事例の全てが振幅の逆転を示すわけでない。 2.知的障害者における純音処理と複合音処理の差異 標準刺激および逸脱刺激として,純音のみまたは複合音(合成母音)のみの対を提示し,知的障害者および健常者における自動的聴覚処理を検討した。純音対と複合音対の周波数上の差異は同一とした。逸脱刺激により誘発されるミスマッチ陰性電位(MMN)を検討した結果,(1)健常者ではMMNの潜時が複合音より純音でより早くなり,振幅が複合音より純音でより大きくなった。(2)現時点における知的障害者の結果において,MMNの潜時は健常者のものと差異がほとんどないようである。ところが,振幅は音の種類により差異が生じる傾向にある。すなわち,複合音では健常者と差異がないにも関わらず,純音では健常者のものより小さいようである。
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