2002 Fiscal Year Annual Research Report
青年期の子育て心性に関する研究-虐待的行動との関連から-
Project/Area Number |
13710070
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天貝 由美子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (00314443)
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Keywords | 青年 / 子育て / 虐待的行動 |
Research Abstract |
前年度より引き続き行っている「若者の考える『親になること』」のアンケート調査を完了した(その一部について学会発表を行う予定である;平成15年度教育心理学会大会)。これまでの分析から得られた結果として、中学・高校・大学と学校段階が進むにつれ、「結婚すること」と「親になること(子を持つこと)」をより異なるものとして、また「親になること」の責任感も強く、認識するようになっていた。一方で、結婚観・子育て観の内容は男女によってかなり違うものであった、例えば「子を持つこと」について、男子は学校段階が進むにつれ肯定的イメージを持つようになるのに対し、女子では否定的なものになっていった。ここから、青年の「親になること」に対する理解と納得(感情と知識の両面)は、発達的要因だけでなく、社会的要素・個人的要因も視野に入れて解明していく必要があると考えられた。 そこで、まずはその中の社会的要因に焦点を当てた。幼児教育(保母・親などへの教育・援助を含む)の先進国であるハンガリーで、「青年が親になるための援助・教育」について、関連機関の視察・プログラムへの参加・インタビューを行った(成果は、平成15年度千葉大学教育学部研究紀要に投稿予定)。そこから明らかになったことは、援助を与える側の特徴として(1)教育内容面での工夫(e.g.「自分を知る」ための授業の多さ、学校という枠を超えかつ年齢層の異なった人々の中でのプログラムの豊富さ)、(2)社会制度面での柔軟性(カウンセリングセンター間、学校間の選択および入学後の行き来が比較的自由であり、地域指定もない)である。また、インタビューでは、青年が「親になること」を考える際、最も頻繁に出てくる話題が経済問題であった。これに関しては今後、日本の青年にも同じようにインタビューを行う必要があるが、現代日本社会の抱える「贅沢さ」(本人が心理的・経済的に独立していなくても、親の援助などで気軽に子を持つことができる現状)が大きくかかわっている可能性が考えられた。今後は、これらの問題に対し、個人的な要因(親になる大変さを受けとめる、虐待的行動を思いとどまらせる等の、本人の「心の強さ」)に焦点を当て、研究していく必要があると考えられる。
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