2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13710102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 竜平 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (40323563)
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Keywords | 社会的位置 / 自己呈示 / 自己高揚 / 自己卑下 / 数理モデル / 関係の継続性 / 社会調査 / 実証 |
Research Abstract |
今年度は、自己呈示モデルを2001年秋の数理社会学会で1つ提出した(針原・辻,2001)。現在、新潟県栃尾市と、東京都板橋区で社会調査をするために、すでにサンプリング作業に入っている。以下、これらについて説明する。 針原・辻(2001)では、自己高揚的自己呈示は、それが相手に信用されれば「自分を高く呈示することによって報酬(R≧0)が得られる」という正の効用があるものの、信用されなければ[自分の実力が実際は低いことが分かり損失(L≦0)を被る」という負の効用があると考える。一方、自己卑下的自己呈示は、その逆の効用となる。ここで相手が信用する確率をq、信用しない確率を1-q、ある人の実際の位置をS、その人の自己呈示位置をPとする。また、自己高揚・自己卑下によって得られる報酬も、被る損失も、どれだけ実際の位置よりもかけ離れて自己呈示するかの程度に応じると考え、R=|P-S|, L=-|P-Sとする。自己高揚・自己卑下に関わらず、自己呈示の効用関数は、U=Sum[q^i(P-S)]_<i=1^t>-Sum[(1-q^i)(P-5)]_<i=1^t>となる。その結果、信用される確率に依存せず、先の時点まで考慮するにつれて、自己高揚ではなく自己卑下が適応的になることが分かる。これは、人々の付き合いが一時的であるか長期的であるかによって、取られる自己呈示の仕方が異なることを意味する。 栃尾市と板橋区の調査は、上記のモデルの知見を確認するために行われる。栃尾市は、いくつかの集落が統合されて市制がひかれた経緯があり、実際には長期的な関係に基づく村落的な社会であるが、板橋区は、東京都心部へのベッドタウンであり人口の流入出も大きく、そこでの社会関係は、比較的短期的である。これらの市による実証的な比較研究を行うことで、モデルの正否が確認できると期待される。
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