2001 Fiscal Year Annual Research Report
伝統文化の「所有」に関するエスノメソドロジー的研究
Project/Area Number |
13710108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
足立 重和 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80293736)
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Keywords | 伝統文化 / 所有(権) / (構築主義的)エスノメソドロジー / 郡上おどり / 郡上八幡 / 固有名詞 |
Research Abstract |
今年度は、本研究の目的を達成するための予備的段階として、事例地(岐阜県郡上郡八幡町)における「郡上おどり」の踊り手の現状把握と、伝統文化の「所有」に関わる今後の分析視角の形成を目指した。 1.「郡上おどり」の踊り手の現状 地元行政や観光協会は「郡上おどり」を町の貴重な観光資源としてPRし、そのせいもあって現在1シーズン(毎年7月中旬〜9月上旬の30夜)で約30万人の観光客がこの町を訪れるようになった。だが、地元住民は、自分たちが主催する縁日の踊りには地区総出で会場設営や後かたづけをするものの、肝心の踊り時間には姿を現さない。実際に踊っている人々は、少数の地元有志(=保存会)を除けば、ほとんどが観光客である。また、この踊りは、八幡町だけでなく、岐阜県関市や福井県若猪野地区などで毎年踊られ、定着をみせつつある。つまり、今の「郡上おどり」の踊り手は、人数的にいって圧倒的に「よそ者」である。 2.暫定的な知見と今後の分析視角 このような現状について調査者(=研究代表者)が思うことは、「郡上おどりは一体誰のものなのか」という点である。これに対して、地元住民は、「郡上で踊る、郡上おどりは、郡上おどりであって…」と発話することによって、"郡上"という固有名詞を基軸にして「踊り」と「土地」とのつながりを再確認する。このとき"郡上"という固有名詞の使用は、単に踊りの起源的事実を記述するだけでなく、調査者との会話において、(1)踊りが土地に根差すことに注目せよと指示すると同時に、(2)「これ以上説明の余地がない」ものとして次の話題に移るよう要請するのである。(1)と(2)の会話実践を通じて、地元住民は、「郡上おどりは自分たちのものだ」という所有権を維持している。次年度ではさらに、会話のなかで固有名詞がいかに使用されるかに着目しながら、人々が「伝統文化の所有権」を保持していく方法を明らかにしていきたいと考えている。
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