Research Abstract |
本研究は学習障害児(以下LD児)の対人関係能力,他者の心の理解の能力,認知心理学検査結果の関連を明らかにすることを目的とする。平成14年度は対人関係アンケートの作成,対象となるLD児の数を増やす,認知心理学検査,紙芝居を用いた他者理解に関する検査,対人関係アンケート結果との関係を明らかにする,の3点を行った。対人関係アンケートはSM社会成熟度テスト,KIDS,津守式,友人関係尺度(岡田1995)を参考に25項目を作成し(例 ちょっとしたことでも腹をたてる,学校の休み時間は友達と遊ぶ),いつもある〜まったくないまでの4段階(1点〜4点)にわけコーディングを行い,合計点を算出した(ポジティブとネガティブな内容が混在しているが,合計処理で修正し,点数が高い方が対人関係能力が高いとした)。健常児とLD児との間には有意差(P<0.01)が認められた。対象となるLD児は34名となり,認知心理学検査,紙芝居による他者理解の得点,対人関係アンケート,および対象の学習障害児の評価で用いた京都府LD児に対する指導体制の充実事業で用いられている,学習に関する第二次スクリーニングチェック結果の4項目について2項目づつ6つの組み合わせでSpearmanの順位相関係数をもとめた。その結果,他者理解の得点と対人関係アンケート,スクリーニングチェックと認知心理学検査の2項目で有意な相関が認められた(P<0.05)。認知心理学検査はWISC-IIIは言語性,動作性IQ,K-ABCは継次,同時処理,習得度尺度に分け分析したが,他者理解,対人関係アンケートの結果とは有意な相関が認められなかった。本研究の結果から,他者の心の理解は対人関係能力と関係があること,認知心理学検査,学業とは関係しないことが明らかとなった。これは,対人関係能力は認知心理学を基盤としたLD教育では育くむことが困難であり,新たな取り組みが必要とされることを示唆するものである。
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