2001 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代の石器利用体系を総合的に解明するための実証的研究
Project/Area Number |
13710231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨井 眞 京都大学, 文学研究科, 助手 (00293845)
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Keywords | 使用痕 / 顕微鏡 / 礫石器 / 石皿 / ライフヒストリー / 磨滅 / 破損 / 多段階表面変化 |
Research Abstract |
平成13年度は、北白川追分町遺跡出土の縄文時代の石皿や磨石などのいわゆる礫石器を観察した。このうち、磨石・敲石は完形ないし破損面が一面のみのことが多いけれども、石皿は先学の指摘の如く、破損したものばかりであり多段階表面変化の存在が期待できるので、石器表面の磨滅の段階設定に際しては石皿を主たる対象とした。主たる着眼部は、破損面の凸部、および機能面と破損面との接線として構成される稜線である。破損面の観察では、その面内の鉱物などの凸部の磨滅の程度を視覚的に3段階に分類した。破損面の平滑さが、(1)肉眼でも充分に確認できる、(2)実体顕微鏡による10倍程度の検鏡で確認できる、(3)10倍程度では確認できない。稜線の観察では、同様に以下の3段階区分をした。磨滅による平坦面が、(1)肉眼でも確認できる、(2)実体顕微鏡による10倍程度の検鏡で確認できる、(3)10倍程度では確認できない。 破損面ごとに磨滅の程度を見てみると、破損面が複数ある場合はそこに多段階表面変化が確認できることが多い。そして、破損面の段階と稜線の段階とは必ずしも一致こそしないが、一つの個体内にあっては、その組合せにおいて相対的順位に入れ替わりはない、つまり磨滅度が低い破損面はその面と機能面とが構成する稜線の磨滅度も高くはない。 一方、礫石器の石材は、火成岩では花崗斑岩や閃緑岩が多い。また石皿には、砂岩などの堆積岩が用いられることも多い。これらの石材は、遺跡付近を流れる高野川の現在の礫種組成においておよそ4割を占めていることがわかっているので、縄文時代でも獲得は容易だったと思われる。 以上より、石材や使用時の力学的作用もおよそ同じであるこれらの礫石器でも、必要な法量・形態をはじめとする諸要因によって、器種毎にライフヒストリーの長短が存在することが想定された。
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