2001 Fiscal Year Annual Research Report
砥石使用形態からみた日本における弥生時代鉄器化の研究
Project/Area Number |
13710235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
村田 裕一 山口大学, 人文学部, 助手 (70263746)
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Keywords | 砥石 / 石器 / 鉄器 / 生産 / 流通 / 金属 / 弥生時代 |
Research Abstract |
はじめに、北部九州地域の遺跡から出土した砥石を観察することで、砥石の形態、砥面の横断面形状、使用痕、砥石目といった基本属性について整理分類を行った。形態については、比較的整ったI類と整っていないII類に大別した。I類の形態のものは、平面形と断面形によりさらに細別できる。砥面の横断面形状は、くぼむものについて2種類、平坦なもの、ふくらむものの全4種類に整理した。使用痕は8種類を抽出し、このうちA類としている使用痕は金属器使用との関連性を想定した。砥石目は、サンドペーパーの粒子の規格を観察の指標として用い、極粗粒(#40〜80)、粗粒(#100〜180)、中粒(#240〜600)、細粒(#800〜1500)、極細粒(#2000以上)の区分を設定した。 次に、北部九州地域の遺跡から出土した砥石の砥石目組成の時期的な変遷を明らかにした。一大画期は弥生時代後期で、この時期、極細粒の砥石が全体の50%以上を占めるようになることが判明した。当該時期における鉄器の爆発的増加(普及)に連動する現象として位置付けることができる。 また、細粒砂岩、泥岩、頁岩、粘板岩などの軟質の堆積岩を石材として選択した極細粒砥石について、形態の時期的な変遷に興味深い点が明らかとなった。弥生時代前期には方柱状を主としながら、平板状のものが含まれていたが、中期には方柱状のものが主体となる。大きさは、前期には10cm以内の小型が、中期には10〜20cm程度の中型のものが多い。後期には、引き続き方柱状のものが主体となるが、僅かに平板状のものもある。砥面が使用の方向である長軸方向に大きく反っているものが多くなり、砥面同士も直角に接しないような全体としては、やや崩れた方柱状のものが多くなる。大きさでは、20cmを超える大型のものが見られるようになるのが特徴となる。金属器(主に鉄器)の普及・砥石の流通に関連する現象として捉えることができる。 以上のように、今年度の研究を通して、北部九州地域における砥石の使用形態の変化と当該地域の金属器(主に鉄器)普及を関連づけて評価することが可能となった。
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