2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13710242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
鈴木 裕明 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館, 主任学芸員 (90260372)
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Keywords | 威儀具 / 木製品 / 塵尾 / 翳 |
Research Abstract |
今年度の調査成果としては、まず北九州市金山遺跡VI区出土の木製品の中に新たに団扇形木製品を見出すことができた。これは、すでに筆者が団扇形木製品(5)類に分類したタイプのもので、この分布が河内・出雲・北部九州と広がることが確認された。また、時期的にもいずれも古墳時代初期に属し、その形態や製作技法の類似性や樹種が同一であることなど、それぞれの製作者同士がかなり近い関係にあることが伺われた。このような形態・製作技法の類似性という意味では、同じく今年度調査した古墳時代前期の千葉県茂原市国府関遺跡の蓋形木製品と近江地域に複数みられる蓋形木製品も同様である。このように古墳時代前期の木製威儀具は、すでに畿内各所から出土しているものの形態・製作技法の類似性が言われていたが、点的ではあるが畿内を中心にして更に範囲を広げて北部九州・関東などにも類似するものが存在することが確認できた。また、前述の国府関遺跡出土の蓋の柄の指摘のある棒状木製品についても受部から上方にのびる断面円形のホゾの痕跡や団扇形木製品に類似する精巧な加工の受部などから蓋の柄の可能性が高いと感じられた。精巧な加工の棒状木製品においてこのような受部が確認できれば、蓋の柄の可能性が高いと思われる。滋賀県栗東市の中沢中信遺跡からは古墳時代前期に属するいわゆるさしば状木製品が確認された。筆者はこの種の木製品(杖状木製品)を祭儀などにおいてシンボルを掲げるハタ的な役割を果たしたものと認識しており、その類例に加えられるものと考える。またこの古墳時代前期の杖状木製品が近江地域に分布が集中することも改めて確認された。 中国での調査においては、洛陽周辺の壁画墓・石窟、南京周辺の墓室磚画に表現されている麈尾・翳の形態と、日本の団扇形木製品、翳形木製品との共通性を改めて見出すことができた。また中国の麈尾・翳の変遷から中国でそれらが盛行する段階に、日本においてもこの種の木製品の出土例が増すのではないかと考えられた。
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Research Products
(2 results)