2001 Fiscal Year Annual Research Report
ユートピア文学における主体、共同体、自然に関するエコロジー的視点からの研究
Project/Area Number |
13710273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
川田 潤 福島大学, 教育学部, 助教授 (70323186)
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Keywords | ユートピア / 主体 / 共同体 / 自然 / エコロジー / 科学 / 自然哲学 |
Research Abstract |
本年度は、自然との関係によって形成された近代的な人間/自然の形成過程を、ユートピア文学の系譜の中に位置付けることための予備作業として、ユートピア文学の系譜を整理した。とりわけ、自然を「差異と類似」に基づいて分類することによって形成された近代的な主体が、国民国家を形成することによって変貌し、エコロジー的問題を引き起こすこととなる流れが始まった、17世紀という時代に着目して研究を行なった。 具体的には、フランク・マニュエル等による『西洋世界におけるユートピア思想』、そして、クリシャン・クマーによる『ユートピアニズム』を踏まえつつユートピア文学の系譜を、検討を加え、従来の研究が過度に国家と人間という政治制度の問題にのみ収斂していたかを確認した。その後、ユートピア文学に明示的な国家制度の分析ではなく、それを取り巻く、自然・地理的状況と人間がどのような関係を取り結んでいるかを分析した。とりわけ、モアの『ユートピア』にもその片鱗が垣間見えていた自然開発の方向性(土地の開発、および、自然の改変)が、17世紀におけるフランシス・ベーコン、サミュエル・ハートリプ、マーガレット・キャヴェンディッシュなどにおいて、いかに自然哲学と密接に結びつくこととなったかを検討した。その結果、ベーコンの『ニューアトランティス』などに見られる、自然は改変可能であり、改良することが良いことであるとの発想が、いかにその後の、工業化・科学化による国家形成という言説と結びついていくかが明らかになった。
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