2001 Fiscal Year Annual Research Report
近代西洋思想と英文学における南海表象のジェンダー的観点からの研究
Project/Area Number |
13710276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 卓 金沢大学, 教育学部, 助教授 (10293325)
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Keywords | 19世紀 / 南海 / 南太平洋 / ジェンダー / イギリス文学 / 英文学 |
Research Abstract |
英文学作品研究においては、StevensonやConrad、Maugham、Ballantyne, Martineauらによる太平洋を舞台にした作品を収集し、それらを西洋人の行為に焦点を当てたものと、現地人を軸に語られたものとの2タイプに類別する作業を中心に行った。前者のタイプの作品においては人種問題などの社会的なテーマが扱われがちなのに対し、後者に属する物語では現地人の生活や夫婦の絆など私的な話題が優勢であることを確認した。物語の主人公と内容との相関関係は、西洋人の男性性の強調と同時に、非西洋人に対する女性的な役割の強制を示唆するものと思われる。ただし、両者の作品数が不均衡(後者のタイプの方が少数)なので、英文学のキャノンの下に埋もれている作品を今後も発掘していく必要がある。 南海のジェンダー表象と進化論のコンテクストとの考察に際して、19世紀後半に登場した文化人類学や心理学の重要性に焦点を当てた。とりわけ倫理学や人類学、ひいては解剖学などの科学的な分野までを統合する可能性を秘めた新しい学問として、Alexander Bainらが注目した心理学が、ヒステリー研究といった精神現象の検証から、性差による右脳や左脳の重量的差異の調査に至るまで、19世紀末のジェンダー観に大きな影響を及ぼしたことを確認した。なお、1880年代の心理学についての研究成果の一部として、功利主義心理学の言説を『ジーキル博士とハイド氏』解釈に援用し、論文にまとめた。南海におけるジェンダー表象と西洋思想の具体的な関連性については目下、継続して研究を行っている。 資料調査としては熊本大学文学部に赴いた。同大学に所属していた新井英永助教授(現大阪府立女子大学助教授)がD. H. Lawrenceについて南海表象の研究を行っており、報告者にとって有用な資料を多数収集していたためである。ここで新井助教授から有益な資料と助言を得ることができた。
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Research Products
(1 results)