2001 Fiscal Year Annual Research Report
英国ロマン主義における「近代」の誕生と明治日本における「西欧近代」の受容と変容
Project/Area Number |
13710282
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
水越 あゆみ 帝京平成大学, 情報学部, 講師 (50239232)
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Keywords | ロマン主義 / 比較文学 / 北村透谷 |
Research Abstract |
申請者は平成13年度、明治文学、特に明治浪漫主義文学を中心に研究を進めてきた。19世紀半ば以来、圧倒的な勢いをもって流入してきた西欧近代思潮は、明治期の「文学」にも決定的な影響を与えた。西欧思潮の輸入が、現在にまで続く日本の「文学」制度を形づくったと言っても過言ではない。 様々な文学運動が次々と移植され始めた明治20年代、西欧(特に英国)ロマン主義を積極的に受容し、その精神を日本語によって表現しようと試みたのが、文芸雑誌「文学界」であった。「文学界」同人の北村透谷、島崎藤村、星野天知、平田禿木、戸川秋骨、馬場孤蝶らは、書物だけではなく、キリスト教会や英米人教師を通じて知った「西欧」に憧れ、そのロマン的精神を生きようとした青年達であった。.各人におけるロマン主義の受容と変容の過程はそれぞれに興味深いが、本研究では初期「文学界」の理論的指導者であった北村透谷に焦点を絞る。 明治26年の「文学界」創刊後わずかに1年、26才で命を絶った透谷を、明治日本における西欧思潮の受容と変容のドラマを体現する典型例として本研究の中心に据えるのは、故無きことではない。執筆活動期間5年に満たない透谷だけが「文学界」同人の中で唯1人、日本と比して最も顕著な「西欧」の異質性-すなわちその形而上性-に気づいていたと思われるからである。西欧を西欧たらしめているとでも言うべき形而上的思考を、透谷は自らのうちに移植し、それを自らの言語(日本語)において具現しようと苦闘した。「文学界」に発表された数々の透谷の評論には、西欧と日本の衝突が尖鋭的に顕れている。 来年度の研究では、西欧の受容・変容のプロセスが最もダイナミックかつドラマティックに顕現するトポスとしての北村透谷に、より詳細な検討を加えることとしたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 水越 あゆみ: "新歴史主義批判とキーツ"京大英文学会ALBION. 復刊47号. 89-95 (2001)
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[Publications] Ayumi Mizukoshi: "Keats, Hunt and the Aesthetics of Pleasure"Palgrave. 228 (2001)