2001 Fiscal Year Annual Research Report
古代インドの出家・在家主義と、諸宗教聖典伝承過程におけるテキスト変容
Project/Area Number |
13710298
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入山 淳子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (00272435)
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Keywords | 問答 / 天界訪問 / 地獄天界巡り |
Research Abstract |
現存Nimijatakaテキスト形成史解明を目し、本年度は同Jataka冒頭の19詩節を取り上げた。 Videha国王伝説群には、「出家・在家の優劣をめぐる問答」という主題が少なくない。この19から成る詩節群にも、神と王との問答という場面設定の下に、同様の主題が語られている。 同Jatakaは、この「問答」場面の他に、王の生前における「天界訪問」と「地獄天界巡り」の、併せて3つの主題が合成されている。「問答」は、出家・在家のそれぞれの生活の果報についても触れており、内容の点から、続く二つの主題の導入としての役割を果たしているといえる。 しかし、これら19詩節は、全体としてはひとつの問答場面と理解できるが、実際は、由来を異にするいくつかの小詩節群の集成である。また、19詩節中の冒頭2詩節は、続く「天界訪問」の冒頭に重ねて示されている。 そこで、現存Nimijatakaのテキスト形成史、すなわち、「問答」そして「天界訪問」「地獄天界巡り」へと続く主題の連鎖を生み出した過程を明らかにする意図から、各詩節について、まず、各詩節の平行詩節をパーリ語、サンスクリット語、プラークリット語、漢訳など、仏教をはじめとする諸宗教聖典の中に求め、また語彙レベルにおいては、固有名詞を中心に、背景となる逸話を諸文献に求め、Nimijatakaにおける位置づけとは別に、各詩節の意味するところを、その本来の文脈にさかのぼって明らかにした。 これらの情報を手がかりに、Nimijataka冒頭19詩節の編纂の意図を追究し、また、筆者が既に得た一連の同国王伝説群についての研究成果と併せ、出家遁世思想のみならず、在家主義をも含めたより大きな思想史的視野から、同Jataka現存テキスト形成を考え、その成果をまとめた。
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Research Products
(1 results)