2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13710304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 彰 大阪大学, 言語文化部・英語教育講座, 講師 (90312438)
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Keywords | 引用 / 著作権 / 談話分析 |
Research Abstract |
今年度は、交付申請書の研究実施計画に基づき、主に言語学者・談話研究者の先行研究と、法律学者の著作権に関する議論を調査した。そこで明らかになったのは、言語学者・談話研究者の研究には、引用とは何か、また創作性とは何かといった考察や、その文化的および社会的意味を問うものが多いのに対し、法律学者は、そのような点についてほとんど触れず、現行法の解釈や過去の判例について解説するものが多いことである。法律学者の間では、他者の著作物を素材として明示的に引用するジャンルであるパロディーは二次著作物に過ぎず、著作物として保護すべきではないとの意見が多数で、また創作性のレベルの高さといった「主観的」で「暖昧」な判断基準を著作物の要件にすべきではないとする意見が多数であることが分かった。その一方で、談話研究者は、引用や創作性に対する考え方の歴史的、地域的な違いに関心を抱き、そのことがグローバル化した社会にどのような影響を及ぼすかについて考察している。このような引用や創作性の本質にかかわる考察が法律学者の議論には欠落しており、何をもって著作物とするのかといった明確な定義がないまま裁判が行われている現状は、コピーが容易な「デジタル社会」になりつつある現代において、問題であると言わざるをえない。これらの結果に基づいて、来年度は、引用や創作性に関する言語学および談話研究の最新の動向を踏まえ、著作物の定義を明らかにし、判例や法律学者の議論を検討するつもりである。
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