Research Abstract |
既存の構音障害患者の明瞭度評価法は,発話の明瞭さに関する量的指標は提供するものの,明瞭度を低下させている構音の誤りに関する情報までは提供しないことが短所といえる.本研究では,この短所を補うため,患者の構音の誤りを音声学の知見を援用して明示的に分析する検査法を作成した.今回,作成した明瞭度検査は,患者が音読する単語と,音読音声を一般健聴者が聴取し,何と聞こえたかを同定する際に用いる聴取用単語リスト,結果分析用の異聴パターン表,集計表から構成されている.聴取用単語リストには,構音障害患者が音読した単語(目標語)および,この目標語との間で,基本的に1母音(母音の長短の違いを含む)もしくは1子音が異なる点で対をなす語4語が同じ列にランダムに配置されている.リストに含まれる語は全て有意味語で,目標語の選択にあたり,80語全体で,日本語のすべての母音,子音が1回以上出現すること,語内の出現位置に関しても,すべての母音,子音が語頭,語中に出現するよう配慮した.患者の構音の誤りを分析する際の音声学的対立として,23の項目を設定した.これらは,母音間の音声学的差異に関する項目,有声-無声の違いに関する項目,構音点の違いに関する項目,構音様式の違いに関する項目,音の省略あるいは付加に関する項目,拗音,弾音,半母音,促音と他の構音点,構音様式の音との対立に関する項目に大別される.本検査の信頼性,妥当性を検討するために,dysarthria患者10症例に本検査ならびに伊藤の単語明瞭度検査を施行した.患者の音声資料の聴取者は大学生で,症例ごとに5名ずつ,計50名が聴取を行った.聴取者全員に,約1ヵ月の間隔をおいて,同一症例の録音音声を2回聴取させ,検査の信頼性の検討資料を収集した.13年度終了時点で,症例データの採取および聴取実験を完了し,結果の整理,分析が進行中である.
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