2001 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア文学作品における表象としての日本と日本人―その発話の抑圧のメカニズム―
Project/Area Number |
13710319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
溝渕 園子 熊本大学, 文学部, 講師 (40332861)
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Keywords | ロシア文学作品 / 日本と日本人のイメージ / 日露関係 / 日露比較文学 |
Research Abstract |
2001年度は、基礎作業として、研究課題に関する文献調査および収集に重点をおいた。 まず、18世紀から20世紀にかけて、ロシアにおける日本および日本人のイメージ形成に大きな役割を果たしたと思われる、日本からの漂流民や開港後に訪日したロシア人が記した見聞記を日本の国会図書館をはじめとする各図書館、またロシア国立図書館にて複写収集した。その際、視野に入れなければならないロシア側からみた日露交渉史については、購入したロシア外交史料館文献目録が大いに収集の能率を上げた。 次に、19世紀から20世紀にかけて書かれたロシア文学作品の中で、イメージとしての日本および日本人があらわれるテキストを収集した。資料となるテキストは、明治初期や日露戦争後に多いことが確認された。ロシア国立図書館やロシア国立人文大学附属図書館、またロシア国立外国語文献図書館において、第二次世界大戦以前に発表された作品を複写して収集した。 さらに、ヴァレンチン・ピークリ『オキヌさんの物語』などにあらわれる「はかない」「美しい」「神秘的な」「かわいそうな」日本人女性のイメージの生成には、長崎から極東地域に渡った「からゆき」や長崎のロシア人相手の娼婦にまつわる言説が作用しているのではないかという仮説のもと、明治前後の日本もしくは日本人とロシア人の文化交流について、長崎・稲佐で実地調査を行った。その結果、長崎がロシアに対しても開港された当時の日露交渉と、大日本帝国の「からゆき」娘子軍をめぐる日露交渉との間には、同じ長崎という場でありながらも交渉史としては断絶がみられることがわかった。よって、それぞれのイメージを別のものとして捉えながら、文学作品における女性像が生成される際には、複合的に論じる必要性を認識するに至った。現在、このことに関して論文を執筆中である。
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