2001 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン「民主主義」のゆくえ―権力構造の変容過程に注目して―
Project/Area Number |
13720062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 和宏 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (00273748)
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Keywords | 民主化 / フィリピン |
Research Abstract |
本研究は1986年のピープル・パワーによるマルコス大統領追放劇以降のフイリピン「民主化」の実態を権力構造の変容を軸として分析しようとするものである。初年度に当たる平成13年は、フィリピンの中央政界における政治権力構造を、特に上下院議員のバックグランドを中心に調査を行った。一次文献・二次文献の収集は主にフィリピン大学附属図書館、アテネオ・デ・マニラ大学附属図書館、下院議会附属図書・資料室等にておこなった。 現在、入手資料分析の過程にあり最終的な結論とはいえないが、当面以下の仮説を持っている。制度的側面で見た場合、戒厳令期を除き一定の整備がされていたため、1986年以降の「民主化」によって大きな変化はなかった。また86年に政権についたアキノ大統領や新憲法下における国会議員は、旧来の名望家出身者、大土地所有者がおおく、必ずしも大きな変化があったわけではない。にもかかわらず、市民運動に支持を受けた新しいタイプの政治家が中央政界に進出する契機にはなっている。しかし、この新しい傾向が定着するかは否かは、土地所有政策、商工業部門への税制改革等にかかっているといえる。また1980年代以降、特に1992年の米軍基地撤退決議を前後として、フィリピン政治・政界に多大な影響力をもってきたアメリカから一定の距離を持ち始めようとする傾向が見られる。政治経済におけるアメリカ依存構造を脱却できるか否かもフィリピン民主主義にとっては大きな課題である。 以上の仮説的結論を、入手された資料分析とあわせて、地方政治における権力構造を分析することによってさらに検討するつもりである。
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