2001 Fiscal Year Annual Research Report
人の国際移動の管理と人権保護のための国際制度形成に向けて:国際機関の取り組み
Project/Area Number |
13720067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柄谷 利恵子 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (70325546)
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Keywords | 移民政策 / 庇護政策 |
Research Abstract |
平成13年度においては、本研究に関連した1次及び2次資料の国内での収集に専念した。また、2001年度は難民条約採択50周年だったため、国連高等難民弁務官事務所による難民保護及び庇護政策の変遷に関する資料及び研究が多数発表された。そこでこれらを使って、1980年代以降のヨーロッパ諸国とくに英国の庇護及ぴ移民政策に関する論文を執筆した。 論文の中では、1980年代以降、英国をはじめとする西欧の先進国が、以下の3つの問題意識のもとで移民及び庇護政策を進めてきていると論じた。その3つとはまず第1に、庇讃希望者の大半が経済目的の移民であり、第2に、庇護希望者と移民の境界が交錯している状況において、移民法と庇護法を統括した枠組みが必要であるという点である。さらに第3に、迫害や拷問から逃れてきた真の難民を助けるはずのシステムが、経済目的の移民によって悪用されているため、難民保護の観点からいっても、移民・庇護法を強化し、虚偽の庇護希望者の入国規制を徹底的におこなうべきだと考えられている。英国のブレア首相はさらにもう一歩踏み込んで、1951年難民条約を「時代遅れの法律」と評し、大量かつ頻繁に人の国際移動が行われる現状に合致した、新たな国際的枠組みの必要性まで示唆している。結論としては以下の2点を指摘した。まず第1に、現在西欧各国は、悪質な移民斡旋業者の手引きで不法入国を行う非熟練労働者を一定程度受け入れることで、彼らを劣悪な状況から救いだそうとの試みをはじめている。その一方で第2に、海外からの高技能移民の獲得にむけた世界規模の競争が始まっており、その狭間で切り捨てられようとしているのが、庇護申請が受理された時点から、高度に権利が保障されるという意味で、国家に大きな経済・社会的負担を課すと危惧される庇護希望者である。 平成14年度は、13年度に出来なかったジュネーブでの資料収集及びインタビューを夏季に集中的に実施する予定である。その後、研究成果を論文としてまとめ発表したいと考えている。
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Research Products
(1 results)