2001 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における国民創出の試み-中国国民党の新生活運動
Project/Area Number |
13720075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
深町 英夫 中央大学, 経済学部, 助教授 (00286949)
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Keywords | 中国国民党 / 政治体制 / 近代史 / 政治史 |
Research Abstract |
本年度は、新生活運動(1934年〜1949年)に関する先行研究・基本資料を可能な限り収集・整理・検討しつつ、これまでに自身の行なってきた1920年代以前の時期に関する研究との連続性を考察することに重点を置いた。その結果、新生活運動が発動された背景として、1920年代前半に広東省において構築された新たな政治体制が、国民革命(1926年〜1928年)を経て弛緩・変質をきたし破綻・崩壊の危機に瀕しており、それ故にこそこの運動によって体制の再建が図られたことが次第に明らかになってきた。具体的には、農民・労働者・学生といった大衆運動への浸透に貢献してきた中国共産党との分裂によって、中国国民党の地方・基層党組織が大幅に弱体化し、また軍事エリートを吸収しつつ北伐を進めたため地方政府の中央政府に対する自立化が進み、その結果として中国国民党が国家と社会との間で唯一の媒介となるべき、「党国全体主義体制(party-state totalitarian regime)」は空洞化を余儀なくされた。中国国民党・国民政府内部においても地位の不安定だった蒋介石は、既存の党・政府組織には依存し得なかったため、運動という非制度的大衆動員を通じて自己の権力基盤を強化しつつ、近代的国民の創出により対日関係の悪化や中国共産党勢力の抵抗に対処することを図ったのである。 この様な一連の経緯を政治体制の転換という観点から理論化するため、「フラクタル」・「ホラーキー」という二つの概念を援用して模式化し、これを2001年8月に論文として発表すると共に、10月に台北市の〈辛亥革命九十週年國際學術討論會〉と、武漢市の〈紀念辛亥革命九十周年国際学術討論会〉において研究発表を行ない、中国(大陸・台湾)の研究者と議論を交わした。
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Research Products
(1 results)