2001 Fiscal Year Annual Research Report
J.M.ケインズの自由主義思想研究-イギリス新自由主義者ホブソンとの対比-
Project/Area Number |
13730016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
八田 幸二 東京都立大学, 経済学部, 助手 (60326006)
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Keywords | 自由主義 / ホブソン / ケインズ / 経済思想史 / 社会思想史 / 福祉国家論 / 新自由主義 / 経済学史 |
Research Abstract |
イギリス新自由主義者J.A.ホブソンの修正自由主義・福祉政策思想の基礎である彼の経済理論が如何なるものであるのかという点を解明するために、彼の経済理論の構造をThe Physiology of Industry,1889からThe Industrial System,1909等に至る膨大な著作・論文群に内在して検討した。こうした研究は、ホブソンが与えたJ.M.ケインズへの影響が如何なるもあであり、両者の経済理論における共通性と異質性が彼等の自由主義思想へ如何なる影響を与えたのかという点の解明を目的とするものである。 ホブソンの経済理論における特質は、ケインズが『雇用、利子及び貨幣の一般理論』において言及しているように、「過少消費説」に見出すことができる。この過少消費説において不況と非自発的失業の発生原因は、国内の過少消費・過剰貯蓄にあり、それが過剰投資、過剰生産、過少雇用を生起させるものとされる。そして、ホブソンはこの過少消費の原因を剰余の不公正な分配、即ち、不公正な所得の分配に見出す。そして、ホブソンはこの分配の不公正を国家の所得再分配政策の実施によって是正し、そのことによって不況・失業を解消し得ると主張した。このようにホブソンの自由主義思想は彼の経済理論によって明確に基礎付けられているのである。消費面に分析が限定されているとはいえ、(消費の)有効需要不足を不況・失業の原因とし、それを国家介入政策によって解消しようとする点においてホブソンの経済理論と政策思想、即ち、修正自由主義思想は後のケインズ主義を準備するものの一つとなったと考えることができる。こうした点が、平成13年度の科学研究費補助を得て得られた研究成果である。また、この研究成果は、経済学史学会の学会誌である『経済学史学会年報』において「J.A.ホブソンの新自由主義と過少消費説」として結実し得た。
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Research Products
(1 results)