2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染問題と漸進的租税改革:環境汚染を考慮したときの望ましい税制改革の方向性を示す
Project/Area Number |
13730020
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小川 禎友 近畿大学, 商経学部, 講師 (30330228)
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Keywords | 環境汚染 / 消費外部性 / 漸進的租税改革 / Total Distortion Rate / Marchallian adjustment mechanism with externalyti effects |
Research Abstract |
この研究では環境汚染のような消費外部性が存在する状況で,望ましい租税改革の方向性を明らかにした.結論を述べる前に次の2つの定義をする. 定義1:Total distortion rate(TDR).TDRとは、財の消費から発生する総合的な歪みを、その財の消費者価格で評価したものである。ここでは、ある財を消費することから2つの歪みが発生している。1つは、財を消費することから発生する環境汚染による歪みである。結果として財の過剰消費を引き起こしている。もう1つは、税による歪み(死重損失)で、財の過少消費が発生している。総合的な歪みはこれら2つの歪みを合わせ、金額表示にしたものである。つまり、TDRとは価格1当たりの財の消費において、どれくらいの歪みが発生させているかを表したものになる。 定義2:Marshallian adjustment mechanism with externality effects(MAE).MAEとは消費外部性を含むマーシャル型調整過程である.その特徴は以下のように表される.(i-a)生産量に消費量が等しくなるように価格が調整される.(i-b)消費量の変化により,発生する外部性のレベルが変わる.(i-c)変化後の外部性のレベルを所与として,消費者は効用を最大にするように消費量を決定し直す.このとき,消費量と生産量が等しくないので再び(i-a)の調整過程に入る.これらの調整過程が均衡に到達するまで続く.以上の調整過程が終わると,ある均衡価格が達成されている.この価格の下で,(ii)生産者は相対価格と限界費用が等しくなるように生産量を調整する.この調整により,再び生産量と消費量を一致させるように価格が調整され,(i-a),(i-b),(i-c),と調整過程が続く.(i-a),(i-c)の調整過程の終了後,再び(ii)の調整過程に入る.これらの調整過程が均衡に到達するまで続く. 以上の定義を使い次の結論を得る. 結論:初期の均衡が,MAEの意味で安定的だとする.そのとき、(1)TDRが最も高い(低い)財の税率を少し引き上げる(下げる)ことにより、あるいは,(2)各財の税率をTDRに比例的な値で同時に引き上げれば、消費者の効用レベルは改善される. ここで扱う消費外部性とは,消費者の財の消費から発生し,直接消費者の効用関数に影響を与えるものである.このような種類の消費外部性は他に,交通混雑,コンピュータのネットワーク等がある.つまり,この研究で得られた結論は混雑問題等にも容易に応用することがきできる.
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