2001 Fiscal Year Annual Research Report
アウトソーシングが労使関係に与える影響に関する調査研究
Project/Area Number |
13730041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
石井 まこと 大分大学, 経済学部, 助教授 (60280666)
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Keywords | 企業別労働組合 / アウトソーシング / 企業グループ / 賃金体系 / 労働運動 / 分社化 / 労使交渉 |
Research Abstract |
今年度はアウトソーシングの研究=調査資料を整理=分析をするとともに、アウトソーシングを進める企業と労働組合の資料=ヒアリング調査を行った。アウトソーシングとはコア業務への経営資源の集中により、効率的で競争力のある経営を行おうとする手法で、現段階では日本におけるアウトソーシングは業務委託=請負によるコスト削減中心のものが多く、経営資源を集中=分割して互いに対等な関係で経営効率を高める段階には至っていないと考えられる。ただし、企業再編法制の整備、規制緩和、価格競争の急速な進行に伴い、企業組織を機能別に分割して子会社化するだけでなく、各子会社が当該企業グループを越えた事業展開を行い、企業としての業務遂行の自立性をつける新たな方向が展開していることが調査から分かった。ただし、それは資本からの自立性ではなく、グループ企業を主とするものであり、限定された自立性である。こうしたアウトソーシングの移行期における日本の典型的組合=企業別労働組合も変容を調べると、企業組織の再編による別会社等への労働者の移動が、労働条件の差異を生じさせ、組合の組織基盤の脆弱化を起こしている。一方で、労働組合では激化する市場競争を背景に、企業の組織再編=労働条件の切り下げを承認した上で、この格差を小さくする条件交渉に取り組々でいる。ただし、既存の企業別組合が異なる賃金体系をもつ労働者を同じ組織に抱え込むことにより企業グループ全体での労使交渉力は弱まる。こうしたなかで、対抗的労働組合運動の活性化や新労組の結成もみられ、アウトソーシングが労働運動の活発化の契機にもなっているという知見を今回の調査から得られた。
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