2002 Fiscal Year Annual Research Report
制度等の基盤的条件が異なる状況における環境政策選択問題の法経済学的研究
Project/Area Number |
13730047
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松野 裕 明治大学, 経営学部, 助教授 (60308070)
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Keywords | 環境政策 / 環境経済学 / 政策過程 / 法経済学 / 取引費用 / 行政 / 組織 / 交渉 |
Research Abstract |
今回の研究では、平成14年度一年間、報告者が環境省の専門官を兼職し、実際に他の行政官と共に政策形成を行う中で、環境政策の政策形成に関する枠組みについて通常の研究方法では得にくい多くの知見を得たのでそれらを箇条書き的に報告する。 (1)行政の組織は爛熟した巨大な組織である。一つの省庁内部、省庁間、対政治家、対利害関係者(産業界、マスコミ等々)においての物事の進め方の諸ルールは完成されている。他主体がそれにそって行動する以上、自らもそれに沿うのが最も自己の利益に適うものである。しかも、諸ルールを共有する主体の数が多く、定着してからの時間も長いため、それらの改定には巨大な取引費用が必要な状況となっている。 (2)行政組織の仕事の進め方の諸ルールまたは内部の常識というべきものは特殊知識であり、現場で徐々に伝授される。外部の人間の短期的参加は困難である。このことは諸ルールの全体の安定性に寄与している。 (3)政策形成は不完全な知識のもとで行なわれる。行政官は異なる部署を異動し幅広い知識をもつが必然的に専門性は低くなる。専門家による助言のシステムは存在するが不完全である。専門家も専門分野以外では素人であり、完全な知識を持つ主体による政策策定は不可能であり、分散する知識の利用方法の性能が問題である。 (4)法や政令等については、国の行政組織は一致していなければならず、そうした事柄については各省庁各部署は当該部署の課題の遂行を優先させるべく割当られている権限を背景に一言一句をめぐる交渉・妥協がおこなわれ合意に到達する。この過程もまた、国の政策の安定性に寄与し、一方で変化を困難にしている。 (5)国際機関や多国間における意思形成も同様に、一言一句を巡る交渉・妥協の中で行なわれている。しかし国際的な交渉では、学問的な一般的知識への参照が多くなり、日本側からの意思形成の積極的寄与はある程度困難になっているように思われた。
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