2001 Fiscal Year Annual Research Report
規制緩和後の日本企業の銀行借入、社債、増資の間の選択に関する研究
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13730060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
蟻川 靖浩 山形大学, 人文学部, 講師 (90308156)
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Keywords | 負債の規律 / 過剰投資 / デッドオーバーハング / コーポレートガバナンス |
Research Abstract |
上場企業に関する財務データとコーポレートガバナンス関係のデータセットを作成し、それをもとに、企業の負債が企業の投資行動に与える影響を検討した。具体的には、トービンのQ、および、社債と銀行借入の合計値としての負債水準を主要な説明変数とする投資関数を、東京証券取引所一部上場の製造業データをサンプルとして推計し、日本企業の投資行動を分析した。今だ暫定的ではあるが、現時点で得られている主な結果は、 1)90年代において負債の投資に対する制約が確認された。 2)90年代に強まった負債の制約は、成熟企業の過剰投資が負債によって規律されている側面があることは否定できないものの、成熟・成長両企業群で、デット・オーバーハングを含む負債による過少投資が発生している可能性が高い。 3)機関投資家、あるいは外国人の株式保有は、成熟企業に関して、投資の負債による制約を緩和しており、その役割は,負債と代替的に過剰投資を抑えるか、なんらかの形で負債に投資制約を緩和していると見ることができる。 4)経営者の株式保有比率は、成長機会のある企業の投資を促進する作用を示した。経営者の株式保有が、資産代替の可能性の上昇というコストとともに、リスク負担能力の上昇というベネフィットを持つとすれば、投資に対する負債の制約の強まった近年の日本企業では、経営者の株式保有のベネフィットが改めて発揮され始めたと見ることができる。 5)これまでしばしば想定されてきた、安定株主などによるリスクシェアリングを通じた投資の負債制約の緩和機能は、90年代にはほとんど確認できなかった。 というものである。
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