2002 Fiscal Year Annual Research Report
規制緩和後の日本企業の銀行借入、社債、増資の間の選択に関する研究
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13730060
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
蟻川 靖浩 山形大学, 人文学部, 助教授 (90308156)
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Keywords | 過剰債務問題 / 過少投資 / 負債の規律 / メインバンク |
Research Abstract |
本年度は、1990年代の負債の増加が、日本企業の行動、中でも投資行動にどのような影響を与えたのかを分析した。実際、近年注目を集める純有利子負債キャッシュフロー倍率を見ると、非製造業では、97年末の金融危機後には、メディアンは7倍以上を越えた水準で推移している。また、「過剰」債務のひとつの目安とされる、純有利子負債キャッシュフロー倍率10倍以上の東証1部上場企業(金融、電力・ガスを除く)は、90年の967社中140社(14%)から、金融危機後に大きく増加し2000年には、1138社329社(29%)を数えることことなった。高い純有利子負債キャッシュフロー倍率が問題となるのは、「過剰」債務が日本企業の投資低迷の有力な要因の1つと考えられているからである。ただし、負債と投資行動の負の関係には、過少投資を引き起こすケースと過剰投資を抑制するケースの両方が存在しうる。そこで、1990年代の企業の投資行動に対して、過剰債務の存在が企業の過少投資を引き起こしているのか、あるいは負債によって過剰投資の抑制や不採算部門からの撤退を目的とした事業売却が行われているのか、を実証的に検証した。 主な結果としては、まず、非製造業企業の中には、ソフトな予算制約の結果、過剰債務の累積に直面した企業群が存在した。他方で、製造業の企業の投資は、90年代に入って負債に対する感応を強めている。しかも、負債による規律が作用していると見られる企業群と、負債による投資制約に直面していると推定される企業群とが混在している可能性が確認された。さらに、金融危機以前には、メインバンクからの借り入れ依存は、主として成熟企業における負債による規律を強めた側面が大きかったが、金融危機後には銀行の不良債権処理に伴う貸し出しの圧縮が成長企業の投資を制約したことが確認された。
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