2002 Fiscal Year Annual Research Report
経済発展段階と租税政策の役割-タイ税制に基づく実証分析
Project/Area Number |
13730063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
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Keywords | タイ経済 / 世帯間所得分配 / タイル尺度 / 所得源泉 / 所得再分配効果 / 課税ベース / 個人所得税 / 等価所得 |
Research Abstract |
タイ経済は1980年代初頭から現在にかけて経済発展を劇的に遂げて来たものの、所得分配の問題は解決されたという状況に至っていない。本研究では、タイの租税政策の役割、特に租税の所得再分配効果に着目して、実証分析を行った。分析方法として、タイ政府のCabinet Office附置のNational Statistics Officeが2年ごとに公表する「Report of Household Socio-Economic Survey-Whole Kingdom」の"一人当たり消費支出階級別の平均月間所得"のデータを用いて、タイル尺度と等価所得概念に基づき課税前・課税後の世帯間所得分配状況を把握し所得再分配効果の計測を試みた。主な結果を以下にまとめよう。 第1には、世帯間所得格差は1990年代に入った後少なくとも1998年まで多少縮小する傾向にあったが、近年再び拡大する傾向にある。どの所得概念で観察しても、つまり総所得、貨幣所得、経常所得、賃金、以上と同様な傾向が見られる。 第2には、タイル尺度の分割可能という特徴を活かして所得源泉別でみた世帯間所得格差の構造を分析した結果、次のようなことがわかる。平均的にみて、世帯収入に大きく占めたのは賃金であるのに対して、財産収入は非常に小さい。一方、世帯間の財産収入の格差はもっとも大きい。賃金の格差は財産所得の格差に相次いで大きいものの、その絶対的なレベルは90年代をとおして上昇する傾向にある。総合的に見て、タイの世帯間所得格差は、賃金の格差による部分が大きいことがわかる。 第3には、以上の世帯間所得分配状況を課税前の状況と想定して、課税後の世帯間所得分配状況を把握し個人所得税による再分配効果を計測した。その際、税負担に、(1)一人当たり消費支出階級別の平均月間所得"のデータの中の"税負担額"(ほとんどは個人所得税)、(2)総所得データを使って総合所得課税の立場で各年の個人所得税制で再計算した"税負担額"を用いた。実際に各世帯が負担した個人所得税負担額((1))の場合でみた所得再分配効果はそれほど大きくない。それに比べて、(2)の場合による計算では、所得再分配効果は非常に大きい。この結果は、タイ個人所得税制度を反映していると言える。つまり、現行の制度では、実際問題として、さまざまな所得は課税所得から外されている。それは、本来の個人所得税の再分配効果を弱めてしまっていると言える。
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