2001 Fiscal Year Annual Research Report
人々の期待形成を組み込むマクロ計量モデルに基づく日本の最適な金融政策ルールの導出
Project/Area Number |
13730067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 助教授 (20266068)
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Keywords | 期待形成 / 予備的貯蓄 / デフレ・スパイラル / 政策ルール / 物価水準の財政理論 / マクロ計量モデル |
Research Abstract |
平成13年度の研究計画は、以下の三点について作業を進めることであった。各作業の進捗状況を報告する。 1. 人々の期待形成の理論的枠組み 二つのテーマに取り組んでいる。一つは、(1)雇用不安が家計の消費行動に与える影響、もう一つは、(2)デフレ・スパイラルを引き起こすメカニズムについてである。 (1)雇用不安によって、家計の予備的な貯蓄が進み、消費を減退させている点について、理論モデルを考えた("An Incomplete Market Model with Idiosyncratic Risk and Stochastic Monetary Policy : A Quantitative Exploration of the Japanese Stagnant Economy in the 1990s")。 (2)デフレを回避する上での限界として、金融政策には、流動性の罠の下での名目利子率のゼロ制約、一方、財政政策には、歴史上稀に見る累積的な財政赤字による緊縮財政、が存在する。デフレ・スパイラルの根本原因が、これら二つの政策の組み合わせにあることを、「物価水準の財政理論」を用いてモデル化した("Searching for Fiscal Policy Rule against Deflation")。 2. マクロ計量モデルの解 (1)確率的なマネー・サプライ・ルールを想定した動学的マクロモデルの解を、上田貴子助教授(早稲田大学)の協力により導出した。 (2)金融および財政政策のルールを定式化し、完全予見動学モデルの均衡解について、Matlabを用いて現在導出している。 3. 最適な政策ルールの導出 (1)80年代と同規模の金融緩和によってインフレが現在生じた場合、最高1.54%のGDPの損失が見込まれることがわかった。 (2)デフレの阻止には、年間30兆円の国債発行というシーリングを設ける緊縮財政ではなく、財政赤字の累積を覚悟した積極財政が必要である。
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