2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13740090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川下 和日子 筑波大学, 数学系, 助手 (40251029)
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Keywords | 弾性表面波 / Lax-Phillips式散乱理論 / ホイヘンスの原理 / 局所エネルギー減衰 |
Research Abstract |
3次元半空間における線形の弾性方程式の解のエネルギーの伝播と減衰について調べることを目的としている。 弾性波にはP波とS波の二つの異なる内部波が存在し、S波の境界への入射のしかたによりエバネッセン波と呼ばれる表面波が現れる。また、Neumann境界条件の場合には、境界上を伝わるレーリー表面波が生じることが知られている。これら表面波の性質を数学的に捉えるために、半空間の弾性方程式に対し、Lax-Phillips式の散乱理論の枠組みを与えた。Lax-Phillips式の散乱理論ではは波の平行移動を捉えている平行移動表現を構成することが中心となるが、その際に表面波が存在するために従来の観点からだけでは平行移動表現の構成がままならなかった。そこでWilcox式散乱理論とLax-Phillips式の散乱理論の比較からその関係を明らかにすることにより、平行移動表現の構成を行った。その結果、内部波はある意味でのホイヘンスの原理に対応する性質を持っているのに対し表面波についてはこの性質が失われるということがわかった。 先だっての研究において、レーリー波の局所エネルギーの時間減衰のオーダーが得られている。これは境界のない3次元空間での局所エネルギーが指数減衰することと比較するとはるかに遅く、ホイヘンスの原理に対応する性質がないことと対応していると思われる。そこで、境界や媒質が摂動された半空間において波全体での局所エネルギーの減衰オーダーを求めた。その結果、そのオーダーはホイヘンスの原理が成り立つ全空間の場合よりも遅く、レーリー波のみの局所エネルギー減衰のオーダーと一致した。局所エネルギー減衰のオーダーを決定するのはレゾルベントの低周波での挙動であるが、半空間の場合には全空間の場合と異なり周波数0のまわりでのレゾルベントの解析性が失われるため、先のような結果となった。一般に地震で観測される表面波は周期が長い低周波のものが中心になっておりその事実と対応した結果であると言える。
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