2001 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を用いた単一高分子鎖の相転移における力学緩和の測定
Project/Area Number |
13740251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡嶋 孝治 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (70280998)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 単一分子計測 / タンパク質 / 相転移 / フォールディング / 力学応答 |
Research Abstract |
本研究では、原子間力顕微鏡が本質的にもっている高空間・時間分解能を利用して、単一高分子鎖のダイナミクスを計測する方法を確立し、合成高分子やタンパク質の構造転移における動的挙動を調べることを目的としている。 初年度(平成13年度)は、AFM装置の試作を行い、球状タンパクのアンフォールディング近傍の粘弾性(力学緩和)挙動を研究した。試作装置のユニークな点は、(1)伸長距離変化用の走査用圧電素子と摂動調和振動用の小型圧電素子を併用した点、と(2)分子応答の大量な時系列データ域を高速・高精度で測定することができる点、である。(1)により、原理的に、既存のAFMの共振特性に制限されることなく高帯での周波数応答測定が可能となった。また、(2)により、14bitの計測データを2MHzのサンプリングレートで計測し、分子の一回の延伸測定において総データ量約50MBからなる時系列データを得ることができる。 球状タンパク質として、フォースカーブ特性が良く知られているウシ由来炭酸デヒドラターゼ(CAB)の変異体を用いた。このタンパク質はN-末端と253番目のGluとをCysに置換した変異体である。基板と探針をアミノシラン化し、共有結合架橋剤SPDPを用いて、タンパク質を探針と基板との間にサンドイッチさせた。CABを微小振動(周波数4-〜100Hz、振幅〜10nm)させながら延伸測定を行うと、分子が収縮するさいに収縮方向に過剰な力(〜100pN)が生じることを見つけた。そして、この過剰力が、タンパク分子内のドメイン構造のリフォールディングと密接に関係していることが示唆された(現在投稿準備中)。 次年度(平成14年度)は、刺激感受性合成高分子の臨界挙動、およびカルモジュリンのCa結合および,非結合状態における力学緩和挙動の測定を試みる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Sekiguchi, H.Arakawa, T.Okajima, A.Ikai: "Non-destructive force measurement in liquid using atomic force microscope"Applied Surface Science. (印刷中). (2002)
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[Publications] T.Yamada, H.Arakawa, T.Okajima, T.Shimada, A.Ikai: "Imaging and mechanical measurement of light-convertible organelles in plants under liquid by AFM"Ultramicroscopy. (印刷中). (2002)
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[Publications] 岡嶋孝治, 荒川秀雄, M.T.Alam, 関口博史, T.Wang, 猪飼篤: "動的AFM法による球状タンパク質の力学応答"日本物理学会第57回年次大会講演概要集. 57,1. 317-317 (2002)
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[Publications] 岡嶋孝治, 荒川秀雄, M.T.Alam, 関口博史, T.Wang, 猪飼篤: "AFMによるタンパク質単分子の力学緩和測定"日本生物物理学会第39回年金講演予稿集. 41. S91-S91 (2001)
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[Publications] 岡嶋孝治, 弘津俊輔: "ゲルの高速収縮のメカニズム:熱力学的考察"第50回高分子討論会. 50,10. 2230-2231 (2001)
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[Publications] 岡嶋孝治, 弘津俊輔: "モノマー溶液中のゲルの体積相転移:ゲル網目・多成分溶液系の現象論"日本物理学会講演概要集. 56, 2. 262-262 (2001)