2001 Fiscal Year Annual Research Report
一般化されたスピン密度汎関数法の開発とノンコリニア分子磁性への応用
Project/Area Number |
13740330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山中 秀介 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10324865)
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Keywords | ノンコリニア分子磁性 / 一般化されたスピン軌道 / スピン密度汎関数理論 / 自己相互作用補正 / 三次元スピン構造 / スピン反転過程 / 金属多核クラスター / 酸化反応 |
Research Abstract |
本研究は一般化されたスピン軌道(GSO)密度汎関数理論(DFT)の開発と応用の両面から成る。 これまで行われてこなかったab initio線形ガウス型軌道(LCGTO)基底をもちいたDFT法につき、我々は定式化も含め独自に種々のDFTもしくはポストDFTの理論をGSOに拡張し開発した。具体的には一般化された密度勾配近似(GGA)、グリーン関数法に基づくGW法、自己相互作用補正(SIC)法の開発である。SIC法の補助的な停留値条件の拡張ならびにGSO-SIC-KS方程式を導出し、その停留値条件を満たすための方程式の解法にBoysの局在軌道法が適した方法である事を示した。このスキームを単純なノンコリニア磁性を有する水素クラスターに応用し、次の結論を得た。まず凝集エネルギーは交換項のみを考慮した場合のLSDAがもっともFull CIに近い結果をしめす。しかしながら乖離極限での全エネルギー差からこれはほとんど自己相互作用誤差によるものであり、実際SICを適用する事でrepulsiveな結果を与えたHartree-Fockと近い結果となるという妥当な結果となった。一方交換・相関項ともに考慮した場合GSO-SIC-GGA法がFull CIに最も合致する結果を与え、ノンコリニア磁性の場合でも、コリニア磁性で論じられて来たようにSICを含めたGGAもしくはその代替法であるHybrid-DFT法等がよりよい方法であることを示した。 応用面では、多中心ラジカル系のスピン縮重状態およびラジカル反応のスピン反転過程というこれまで第一原理計算では扱われてこなかった主題をあつかって来た。前者に関しては、分子骨格の対称性がT_dやO_hといった高い対称性の点で従来のコリニア磁性状態が縮退し、二次元や三次元のスピン構造が安定化される事を明らかにした。これは、水素クラスターでもクロム四核クラスターでも共通の結果となった。又、高次元のスピン相関関数の計算からはスピン密度のベクトル積であらわされるような古典的なスピン相関項ではない、非古典的なスピン相関項が増す領域で上記のような高次元スピン構造の安定化がおこる事が分かった。又、後者については三重項酸素分子の三重項酸素原子二つへの乖離をあつかった。通常この例では酸素分子の三重項と一重項の乖離曲線が交叉し、結合側では三重項が乖離側では一重項が安定となるのであるが、GSO-LSDA、GSO-GGAを用いると、途中スピンが傾斜し連続的なポテンシャルを描く事になる。これはGSOの交換相関ポテンシャル項がスピンの非対角項にもあらわれるためで、それがスピン軌道相互作用や外部磁場等の効果をシミュレートしていると考えられる。高い対称性近傍の構造を持つ金属多核クラスターと酸化反応はともに生物酵素の活性中心でしばしば見られる構造・反応であり、酵素反応の中で本質的な役割を担っていると考えられる。この点からも本研究をさらに発展させる事によって今後より重要な結果が得られる事が期待できる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Shusuke Yamanaka et al.: "Generalized spin orbital GW theory for spin-frustrated and spin-degenerate systems"International Journal of Quantum Chemistry. 84・6. 369-374 (2002)
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[Publications] Shusuke Yamanaka et al.: "Noncollinear spin density functional theory for spin-frustrated and spin-degenerated sysmtes"International Journal of Quantum Chemistry. 84・6. 670-676 (2002)
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[Publications] Shusuke Yamanaka et al.: "Generalized spin density functional theory for noncollinear molecular magnetism II. Influence of gradient correction and self-interaction correction"International Journal of Quantum Chemistry. 85・4-5. 421-431 (2002)
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[Publications] Shusuke Yamanaka et al.: "Generalized spin density functional study of radical reactions"International Journal of Quantum Chemistry. (出版中). (2002)
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[Publications] Shusuke Yamanaka et al.: "Generalized spin density functional study of multicenter metal systems"Molecular Crystals and Liquid Crystals. (出版中). (2002)