2001 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のフォールディングに対する溶媒効果の分子論的研究
Project/Area Number |
13740335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 亨次 福岡大学, 理学部, 助手 (00309890)
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Keywords | タンパク質のフォールディング / 溶媒効果 / アルコール-水二成分溶液 / X線・中性子散乱 / 液体構造 / RISM |
Research Abstract |
溶液中でのタンパク質の構造安定性を溶液のミクロ構造の変化から議論するために、水/アルコール混合溶媒中でタンパク質の変性実験を行い、これと並行して、混合溶媒の液体構造を調べた。F-moc固相合成法によりモデルタンパク質であるキモトリプシンインヒビター2(CI-2)を合成し、メタノール/水、エタノール/水、トリフルオロエタノール(TFE)/水およびヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/水混合溶媒に溶解し、円偏光二色性スペクトルを測定した。また、これらタンパク質溶液の中性子小角散乱測定を行い、変性状態のCI-2の大きさや形状に関する情報を得た。その結果、アルコールの変性効果はメタノール<エタノール<TFE<HFIPの順で大きくなることがわかった。次に、これら混合溶媒にっいて、X線回折実験、中性子散乱実験およびNMR測定によって、静的構造およびダイナミクスを測定したところ、上記の順で水の持つ正四面体ネットワーク構造が壊され易いことが明らかになった。つまり、溶液中でのタンパク質の構造安定性には、水の正四面体ネットワーク構造が不可欠であることが示された。さらにより詳細な液体構造を調べるために、RISM積分方程式の手法を使って、アルコール/水系について原子間相関関数を計算した。アルコールと水の混合比率が異なると、液体構造は大きく変化し、たとえば、水の濃度が高い領域では、アルコールの疎水基は水のネットワーク構造に埋め込まれ、一方、アルコールの濃度が高い領域では、アルコールの鎖構造の一部に水分子が置き換わった構造をしていることが示された。また、RISMの結果は以前に行われた中性子散乱実験および計算機実験の結果とよく一致しており、混合溶媒についてもRISMは液体構造を調べる有力な手段であることが示された。次年度では、これらの基礎的知見をもとに水/アルコール混合溶媒中でのタンパク質のフォールディング機構を解明する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Yoshida, T.Yamaguchi, A.Kovalenko, F.Hirata: "Structure of tert-buthyl alcohol-water mixtures studied by the RISM theory"J.Phys.Chem.B. (発表予定). (2002)
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[Publications] T.Takamuku, A.Nakamizo, M.Tabata, K.Yoshida, T.Yamaguchi, T.Otomo: "Large-angle X-ray scattering, Small-angle neutron scattering, and NMR relaxation studies on mixing states of 1,4-dioxane-water, 1,3-dioxane-water, and tetrahydrofuran-water mixtures"J.Mol.Liquids. (発表予定). (2002)
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[Publications] K.Yoshida, T.Yamaguchi, M.Nagao, Y.Kawabata, H.Seto, T.Takeda: "Slow dynamics of butoxyethanol-water mixture by neutron spin echo technique"App.Phys A. (発表予定). (2002)
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[Publications] 吉田亨次: "中性子で見るアルコールと水の混合-構造とダイナミクス-"表面. 39(10). 395-408 (2001)
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[Publications] K.Yosida, T.Yamaguchi: "Low-frequency Raman spectroscopy of aqueous solutions of aliphatic alcohols"Z.Naturforsch. 56a. 529-536 (2001)
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[Publications] T.Takamuku, A.Yamaguchi, D.Matsuo, M.Tabata, M.Kumamoto, J.Nishimoto, K.Yoshida, Y.Yamaguchi, M.Nagao, T.Otomo, T.Adachi: "Large-angle X-ray scattering and small-angle neutron scattering study on phase separation of acetonitrile-water mixtures by addition of NaCl"J.Phys.Chem.B. 105. 6236-6245 (2001)