2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13740336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
南部 伸孝 岡崎国立共同研究機構, 計算科学研究センター, 助手 (00249955)
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Keywords | 素反応過程 / 励起酸素と塩素反応 / 分子軌道計算 / 電子励起状態 / 波束ダイナミクス / 波束ダイナミクス / 引き抜き反応 / 挿入反応 |
Research Abstract |
主に本年度は、励起酸素原子と塩酸の反応について研究を行った。この反応は長い間、実験と理論の研究における一つの興味の中であり、O(^1D)+HCl(^1Σ^+) →OH(^2II)+Cl(^2P),ΔH_0=-44.4kcal/mol,→ ClO(^2II)+H(^2S),ΔH_0=-6.0kcal/mol,大気化学のモデリングにおける一つの重要な反応である。そして、基礎的な反応ダイナミクスの視点からも次の様な点で興味深い系である。(i)電子基底状態においてHOClとHClO分子に対応する二つの深い井戸が存在することによりO(^1D)+H_2反応のように単純な挿入反応を想起させられるが、引き抜き反応の可能性も実験から示唆される。(ii)二つの生成経路が存在する(上の反応式)。(iii)スピン対称性を保持した場合、5つの電子状態がこの反応には関与するが、今まで電子基底状態のみ理論研究が行われてきており、電子励起状態の役割については不明な点が多い。本研究では第一に、今まで基底状態の特徴のみで議論されてきた問題について新たに2つの電子励起状態を含めた3つの電子状態を考慮することにより、この反応の全体像をつかむための考察を行った。そこでまず、現在考えられる最高レベルの計算を行い、精密なポテンシャルエネルギー曲面を得た。電子構造計算の方法は、状態平均を行った多配置SCF(MCSCF)計算を行い分子軌道(MO)を求め、得られたMOを基に多配置参照配置間相互作用計算(MRCl)を行い、最後にDavidsonの補正を行った。基底関数は、Dunningらの4重基底関数aug-cc-pVQZを用いた。これらの方法を用い、約5000核配置について1^1A'、1^1A"、2^1A'状態のポテンシャルエネルギーを求めた。行った計算の規模は例えば、ある一つの核配置においてA'状態に関するCI行列の大きさは約450万次元程度であり、合計の計算時間がSGI Origin2800(64CPU)を用いて約1ヶ月半を要した。得られた計算精度は、実測のポテンシャルパラメーターに対して全域において0.1kcal/mol以内で一致していることが確認された。相互作用ポテンシャルは、O(^1D)+H_2と同様に、挿入型の基底状態ポテンシャルと引き抜き型の励起状態ポテンシャルからなり、引き抜き型のエネルギー障壁は0.09eV(約2kcal/mol)と極めて類似した結果となっている。そこで、得られたポテンシャルエネルギー曲面を用い量子波束計算を行い、反応の生成物の分岐比を衝突エネルギーの関数として評価した結果、ほぼ衝突エネルギーと無関係にOH+Clの収率がClO+Hの2倍であることが判明した。また、実験結果をほぼ再現する結果を得ている。さらにこの研究は、分子研基礎理論第二中村宏樹グループとの共同研究として実施している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] J.I.Choe, S.K.Chang, S.W.Ham, S.Nanbu, M.Aoyagi: "Ab Initio Study of p-tert-Butylcalix[4]crown-6-ether Complexed with Alkyl Ammonium Cations"Bull. Korean Chem. Soc.. 22・11. 1248-1254 (2001)
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[Publications] J.Outang, K.Yakushi, T.Kinoshita, S.Nanbu, M.Aoyagi, Y.Misaki, K.Tanaka: "Assignment of the in-plane molecular vibrations of the electron-donor molecule BDT-TTP based on the polarized Raman and infrared spectra, where BDT-TTP is 2, 5-bis(1, 3-dithol-2-ylidene)-1, 3, 4, 6-tetra-thia pentalene"Spectrochim. Acta. A. 58(in press). (2002)
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[Publications] C.Miron, M.Simon, P.Morin, S.Nanbu, N.Kosugi, S.L.Sorensen, A.Naves de Brito, M.N.Piancastelli, O.Bjorneholm, R.Feifel, M.Bassler, S.Svensson: "Nuclear motion driven by Renner-Teller effect as observed in the resonant Auger decay to the X^2Π electronic ground state of N_2O^+"J. Chem. Phys.. 115. 864-868 (2001)
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[Publications] I.Tokue, H.Tanaka, K.Yamasaki, S.Nanbu: "Formation of HCl^+(A^2Σ^+) and HBr^+(A^2Σ^+) resulting from He(2^3S) Penning ionization of HCl and HBr"J. Phys. Chem. A. (in press). (2002)