2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13740341
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
高口 博志 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (40311188)
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Keywords | 開殻系ラジカル / 非弾性散乱 / 交差分子線実験 / 状態選別微分散乱断面積 / 量子散乱計算 / ab initio計算 |
Research Abstract |
OHラジカルと同様な電子構造(X^2Π)をもつNO分子の、Ar原子との回転非弾性散乱実験を、交差分子線散乱画像観測装置を用いて行なった。NO分子線とAr原子線との交差衝突領域にイオン化用レーザー光(NO、A-Xバンド)を照射して、散乱されたNO分子の内部状態(J'=5.5〜15.5,Ω'=1/2およびJ'=2.5〜10.5,Ω'=3/2)を選別した、それぞれの散乱分布を画像観測した。ΔΩ=0遷移の低いJ'状態(≦5.5)は前方への鋭い分布を示し、中間のJ'状態(6.5〜10.5)は散乱波の干渉によると思われる複数のピークを示した。ΔΩ=1遷移でも終状態に敏感な複数のピークを有する角度分布を観測したが、各J'状態ではΔΩ=0遷移とは異なる分布を示していた。^2Πラジカルの回転非弾性散乱は、スピン軌道副準位(Ω=1/2,3/2)が非弾性経路として存在し、また2枚のポテンシャル面が衝突過程を支配していることから、古典的に取り扱うことはできない。高精度ab initio計算により得た2枚のポテンシャル面上での、緊密結合法による量子散乱計算を行い、観測結果と比較した。終状態に敏感に変化する複雑な角度分布(状態選別微分散乱断面積)は、この理論計算によりほぼ再現できた。わずかにみられた相違点は、散乱計算に用いたab initio面の精度に起因していると結論した。1970年代に始まった開殻ラジカルの非弾性散乱研究の代表的系であるNO(X^2Π)+Arに対して、量子的挙動を含む衝突動力学を反映している、最も詳細な物理量である単色衝突エネルギーでの状態選別微分散乱断面積が、高分解能散乱実験と厳密量子理論計算において一致することを本研究で初めて実証した。
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Research Products
(1 results)