2002 Fiscal Year Annual Research Report
スズを含む特異なπ電子系の合成とその反応、構造及び物性
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13740349
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理学部, 助教授 (80291293)
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Keywords | ジヒドロジスタンナアントラセン / 9,10-ジスタンナアントラセン / ビ(1,1-スタンノール) / スタンノールアニオン / スタンノールジアニオン |
Research Abstract |
1.9,9,10,10-テトラハロ-9,10-ジヒドロ-9,10-ジスタンナアントラセンの合成と反応 本研究では新規な9,10-ジスタンナアントラセンを合成標的化合物に設定し、その前駆体の合成に必要な9,9,10,10-テトラハロ置換体の合成を検討した。まずスズ上にp-メトキシ基を有する9,10-ジヒドロ-9,10-ジスタンナアントラセンを新規に合成し、そのハロゲン化によって初めての9,9,10,10-テトラハロ-9,10-ジヒドロ-9,10-ジスタンナアントラセンの合成に成功した。このうちヨウ素体に関してはそのX線構造解析にも成功し、中心の六員環部分が平面構造であることを明らかにした。さらに、得られたテトラハロ体と種々のアルキルリチウムの反応により、スズ上にアルキル基を有する9,10-ジハロー9,10-ジヒドロ-9,10-ジスタンナアントラセンの合成にも成功した。現在、この化合物の還元反応による9,10-ジスタンナアントラセンの合成を検討中である。 2.初めてのスタンノールジアニオンの合成 我々が先に初めての合成に成功したビ(1,1-スタンノール)は芳香族性を有するシクロペンタジエニルアニオンのスズ類縁体として興味深いスタンノールアニオンの前駆体になると予想される。そこで、ビ(1,1-スタンノール)にリチウムを作用させると、反応溶液はアニオン種の生成を示唆する濃赤色を呈した。この反応をNMRで追跡したところ、反応の初期段階ではスタンノールアニオンが生じているが、さらに還元反応が進行し、スズ上の置換基の脱離を伴い初めてのスタンノールジアニオンが合成できることがわかった。各種NMR測定の結果、得られたスタンノールジアニオンはかなりの芳香族性を有していることが示唆された。スタンノールジアニオンは芳香族性の概念が第5周期のスズの系にまで拡張できることを提示する重要な化学種といえる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Masaichi Saito: "Formation and Reaction of a Stannole Anion"Main Group Metal Chemistry. 25. 81-83 (2002)
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[Publications] Masaichi Saito: "Formation of the First Monoanion and Dianion of Stannole"Chemical Communication. 1002-1003 (2002)